花粉症と「コロナ感染リスク」の意外に深い関係 「舌下免疫療法」に注目したい理由

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そもそも新型コロナウイルスは、撲滅は難しいだろう。宿主であるヒトをさほど殺さず、変異を激しく繰り返しながら、潜伏期間中も、あるいは無症状者からも感染が広がっていくからだ。

多くの専門家は、ワクチンや治療薬が世界に行きわたることで、インフルエンザと同じような扱いとなる、と見ている。「withコロナ」が定常化した、まさにニューノーマルである。

つまり来年以降も毎年、花粉の飛散時期は新型コロナの感染リスクが高まり、花粉症の人は新型コロナとのダブルパンチを恐れ続けることになるだろう。

花粉シーズンが明けたら「舌下免疫療法」

かくいう筆者も、スギ花粉症に長年悩まされていた。「悩まされていた」と過去形なのは、「舌下免疫療法」で根治したからだ。花粉症が深刻な人なら、聞いたことのある治療法ではないだろうか。

舌下免疫療法は、今のところスギ花粉症とダニアレルギーに対する唯一の根治療法であり、いわば現代の科学的な“荒療治”だ。アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)をあえて少しずつ、繰り返し体内に入れ、体を慣れさせていくことでアレルギー反応が出ないようにする仕組みである。

そうした治療法は総称で「アレルゲン免疫療法」と呼ばれ、実は古来、各所で行われてきた。例えば新米の漆職人は、漆にかぶれないよう、その葉をごく少量食べたという話は有名だ。

スギ花粉症では1日1回、治療薬の錠剤「シダキュア」を“舌の下”に1分間置いておき、そのまま飲み込む。初回のみ医師の監督の下に服用して副作用がないか30分間様子を見るが、あとは自宅で自分で飲めばいい。1週目は低用量の錠剤で様子を見て、2週目から用量の多い錠剤に切り替える。

日本アレルギー学会によれば、治療を受けた8割前後の患者が効果を得ている。当初は1週おきの受診が必要だが、その後は長期処方も可能だ。保険も利くし、2018年からは5歳以上の子どもも治療を受けられるようになった。

ただし、3年以上の継続が推奨される長丁場の治療でもある。オンライン診療を導入している医療機関で治療を受ければ、通院の手間が省ける。医療機関を選ぶうえでの条件のひとつにしてもよいだろう。

それなら今すぐ始めたい、と思われるかもしれない。だが残念ながら、まだスギ花粉が飛んでいるこの時期、舌下免疫療法は開始できない。飛散が完全に終わる5月中旬以降、再び飛び始める12月頃までが治療期間となる。早めに治療を始めれば、次の花粉飛散シーズンから効果を実感できる可能性が高まる。

花粉症は治せる――そうすれば毎年、この時期を快適に過ごし、新型コロナとのダブルパンチにおびえずすむようになる。知っていたけれど手を出さずにいた、という方も、ぜひ今年こそ。新緑の季節になったら始め時だ。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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