震災から10年「原発事故」が抱える未解決問題 汚染水や燃料デブリなど多くの課題を抱える

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やや話が逸れるが、原子力関係施設から出る放射性物質の管理には、「あと○○年でスペースがなくなる」とか「容量を超える」などという予測が頻繁になされる。事故による汚染水は「想定外」で、余剰プルトニウムや放射性廃棄物については計画どおりにいかなかったと説明され、説明を受ける側もそれに慣れてしまったところがある。

そもそもの想定や計画を立てた人びとの倫理的責任は問われない。こんなところにも未来責任の問題が顔を出す。すでに日本社会は、過去の原子力共同体の想定や計画によって、問題を押しつけられている。

福島の生産者への風評被害の危惧も

話を汚染水に戻そう。汚染水の貯蔵タンクの容量に限界があるため、放射性物質が法令の基準値以下になった処理済みの汚染水を海に流すという「海洋放出」が提案されている。人体に影響はないというが、福島県内の市町村議会は、新たな風評被害を招くとして反対表明や保管継続の要望を出している。福島の海産物を買うか買わないかは各人の自由だが、結果として福島の生産者や漁業者が風評被害を受ける可能性は否定できない。

それは、福島の不利益や風評被害が構造的に固定化されることを意味する。失われる利益がどれくらいなのか正確に計算できないが、最終的には補償の問題になるだろう。

汚染水が増え続ける直接の原因は、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)だ。それを取り出さない限り、汚染水は増え続ける。では燃料デブリ対策はどうなっているのだろう。

廃炉作業の中核的位置を占める燃料デブリの取り出し作業は難航している。東日本大震災の際に溶け落ちた燃料デブリを取り出す作業は、2号機で2021年内に、3号機では2031年までに始めることを目指すとしている。建屋内には、溶け落ちたデブリとは別に、使用済み核燃料も存在する。

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