日本とアメリカの「中国観」は世界標準なのか 日本とアメリカの対中観には偏見がある

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これだけを読んでも、同盟関係にある日本、アメリカ、オーストラリアの対中観と非同盟のインドとの温度差は見えない。そこで日本外務省が2021年3月13日に発表した「新聞発表」を開くと違いが鮮明になる。

まず「中国の海洋進出」。菅は東シナ海および南シナ海における「一方的な現状変更の試みに強く反対する。中国海警法は、国際法との整合性の観点からも問題のある規定が含まれており、深刻に懸念している」と、中国を批判した。

しかし共同声明は「国連海洋法条約に反映された海洋における国際法の役割を優先させ、東シナ海および南シナ海におけるルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対応するべく、海洋安全保障を含む協力を促進する」と、中国への名指し批判は避けた。代わって、守るべき「ルール」を列挙する「間接批判」にとどまった。

批判できなかった中国の海警法と現状変更姿勢

2021年2月18日に開かれたQUAD外相会議は「中国の力による一方的な現状変更の試みに強く反対」と、中国を名指し批判していた。

国軍による銃撃で死傷者が増えるミャンマー情勢で、菅は「ミャンマー情勢悪化への重大な懸念を表明するとともに、民間人に対する暴力の即時停止、アウンサンスーチー国家最高顧問を含む関係者の解放や民主的な政治体制の早期回復をミャンマー国軍に対して強く求める」と主張した。

だが共同声明は、「同国における民主主義を回復させる喫緊の必要性と、民主的強靭性の強化を優先することを強調する」と、民主主義の早期回復を主張するにとどまった。

共同声明と、中国、ロシアも賛成した国連議長声明(2021年3月10日)を比べると「平和的なデモ隊に対する暴力を強く非難する」「国軍に最大限の自制を働かせるよう求める」というレベルすら下回る表現にとどまっている。ここで注意したいのは、共同声明がインドと並び、中国批判に消極的なASEANにも配慮したことだ。ASEANは「内政不干渉」を原則にしており、ミャンマー情勢でも国軍批判に踏み込んでいない。

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