「数学でつまずく人」が知らない日本語の使い方 数学の学びで極めて重要な「すべて」と「ある」

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次に、マーチンゲール法という賭け方をご存じだろうか。これはコインの表裏などを当てる賭けに用いる方法で、たとえば最初は1万円を賭ける。それに負けたら次は2万円を賭ける。また負けたら次は4万円を賭ける。

そのように負けたときは次に倍の金額を賭けることにすれば、いつかは勝って、勝ったときにはトータル1万円の利益になる。そして勝ったときの次は、再び1万円の賭けから始める方法である。

たとえば、1回目と2回目と3回目が負けて4回目に勝ったならば、1万円、2万円、4万円がマイナスで8万円がプラスなので、トータルで1万円を得ることになる。その次は、また1万円を賭けるのである。

このマーチンゲール法は、必ず勝つ方法だと考えてしまう人が多くいる。この考え方の問題点は、「いつかは勝って」の部分にある。「n回目までに必ず勝つという自然数(正の整数)nはあるのか」と自問すればすぐにわかるように、nをいくら大きい自然数としても、そのような自然数は存在しない。

一方、どんな資産家でも賭けに使えるお金には上限があり、すなわち連続して負け続けても大丈夫な回数には最大の自然数があるので、その回数を超えないうちに勝たなくては、マーチンゲール法の考え方は成り立たないのである。

「すべて」と「ある」の用法がカギ

いわゆる機械学習の基礎として、微分積分と線形代数が大切であることはよく知られている。どちらに関しても「すべて」と「ある」の用法がカギとなる。微分積分では、基礎としての関数の極限に関して高校では次のように学ぶ。

関数f(x)について、xがaに限りなく近づくとき、f(x)の値がαに限りなく近づくならば、

x→aのときf(x)→α

と書いて、αをx→aのときのf(x)の極限値という。

一方、大学数学ではε(イプシロン)やδ(デルタ)を用いて、「すべて」と「ある」を本質的に使って極限値の定義をきちんと述べるが、普通の読者の方々にはギャップが大きいと考える。そこで極限値について、高校数学と大学数学の間ぐらいの感じで述べてみよう。

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