インフレターゲットで日本経済は救えない

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 まず、日本政府は資金を直接消費者の手に渡す財政政策を使って消費拡大を図るべきである。たとえば、政府はエコポイント制度によって自動車や家電など高額商品の消費拡大に成功した。政府は子ども手当を100%実現し、郊外の下水施設などのインフラ網整備にも資金を投入すべきである。

また、財政赤字拡大に伴う長期金利上昇を防ぐために、日銀は「必要があれば、国債を購入して長期金利を引き下げる」と発表すべきである。

これらの政策は、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長が03年5月に東京で行った演説で提言したものだ。同議長は、財務省が日銀引き受けで国債を発行すれば、過剰な財政赤字の問題を深刻化させずにすむと指摘した。だが、当時から現在に至るまで、同議長のアドバイスは素っ気なく拒絶されている。

財務省の圧力と財政赤字に対する過剰な恐れから、鳩山政権は家計部門の所得を増やす選挙公約にあいまいな態度を取っている。財務省は、日銀がデフレ問題と需要低迷を単独で解決できると信じたいようだが、日銀はインフレターゲット政策を拒絶するだろう。日銀は財政刺激策に財務省と組んで反対するだろうし、国債購入の増加にも抵抗するだろう。これは、世界が日本の輸出品を購入することで日本を救済するのを待っているようなものだ。こうした消極的な発想が20年に及ぶ日本の景気低迷を作り出しているのである。

Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。

(週刊東洋経済2010年4月24日特大号)

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