「会議中スマホを見る人」を襲いかねない問題 タスク・スイッチングが脳を疲弊させる

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パソコンやスマホのあの便利な機能で、実は集中力が下がっていた(写真:Pangaea/PIXTA)
世界中を巻き込んだ新型コロナウイルスによるパンデミックで、時間の使い方を見直した人は多いのではないでしょうか。通勤や飲み会に費やしていた時間が減ったことで自由時間が増えたにもかかわらず、時間がうまく使えないと考えている人も少なくないはず。本稿では、リーダーシップ・行動心理学の研究者であり、『タイムマネジメント大全』の著者、池田貴将氏が、便利なはずのスマホの思わぬ落とし穴について解説します。

マルチタスクではなくタスクの切り替え

私たちの脳は実はごくわずか、1~2%の人をのぞいてマルチタスクができません。私たちがマルチタスクだと思っているものは、単なるタスクの切り替えであることがわかっています。

スタンフォート大学の神経科学者、エヤル・オフィル博士は、「人間はじつのところマルチタスクなどしていない。タスク・スイッチング(タスクの切り替え)をしているだけだ。タスクからタスクへと素早く切り替えているだけである」と述べています。

ためしに、1から10まで数を数えながら会議の議事録をとってみてください。必ずどちらかがわからなくなります。私たちは、どちらも脳の前頭前野を使うような2つのことには、同時に取り組むことができないのです。

そのうえタスクからタスクへと切り替える際には、集中力を取り戻すまでに平均約25分かかり、脳のエネルギーをかなり消費してしまうことがわかっています。

とくにオンライン会議が中心となった最近では、多くの人は意識せずに会議の合間にメールをチェックしたり、書類を作成しながらチャットアプリのメッセージをチェックしていると思いますが、脳はそのたびに集中をいったんストップし、新しくまた時間をかけて集中し直していたのです。

忙しかった気もするし、こんなに疲れているのに大したことができなかったな、と感じた1日はありませんでしたか? それはマルチタスクならぬタスク・スイッチングによって、脳の集中が妨げられていたからなのです。

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