“刺さる”DMで効果20倍、富士ゼロックスの「物販」卒業

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 その際カギとなるのは、営業マンの提案力だ。しかし、「速い」「安い」「便利」をPRし、1台でも多くの複写機を売ることに集中してきた営業マンからは、当然反発が起きた。モノではなくサービスを売れと言われても、「顧客の課題解決」など、カタログには載っていない。

営業マンの教育法を刷新 課題を探りサービスを売れ

ここで体制の一新を迫られた。サービスを見つけ、サービスを売れる組織へ--。商品ごとの事業部制を廃止し顧客の業種ごとにチームを編成、自動車担当の営業チームは自動車関連の顧客企業をすべてカバーする。同じ業種で抱える問題は似ており、情報共有する意味が出てきた。

最前線の営業の裏には、マーケティングやデザイン、技術、開発、生産の専任者が控える。「ドキュメントの運用コストを減らしたい」「競合に奪われた若年層の売り上げを何とか伸ばしたい」など、営業マンが引き出してきた顧客のニーズに応じ、裏方が有機的にチームに加わる。

教育も強化した。2カ月に1度、営業チームの勉強会を開く。学ぶ範囲は顧客企業の業界構造だけではなく、政治やマクロ経済と幅広い。特にビジネスの転機になる法律の改正時には迅速に対応する。「物事をマクロでとらえられる営業マンこそが、ミクロの課題を見つけ出せる。『サービスを売る』とはそういうことだ」(山本社長)。JTBトラベランドの例をはじめ、打ってきた布石が徐々に成果を出し始めている。

目下、取り組んでいるのは、人事評価の基準作りだ。売った複写機の台数で評価してきた過去と、チームでの営業体制を敷いた現在とでは、基準は違ってしかるべき。試行錯誤の真っ最中である。

「かつて箱モノだけで稼いでいたIBMは、今や完全にサービス型の企業。われわれも必ず変われる」と山本社長は自信を見せる。すべての営業マンを“モノ売り”から“コト売り”に転換させる舞台は整った。創業50周年を迎える2年後、富士ゼロックスという会社の顔は思惑どおり大転換を遂げているだろうか。ここからが見せ場である。

(前野裕香 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2010年4月24日号)

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