“刺さる”DMで効果20倍、富士ゼロックスの「物販」卒業


 「複写機は卒業だ」。08年、山本忠人・富士ゼロックス社長はテレビ番組の取材でそう宣言した。

50年間、会社は複写機で食べてきた。機械を売って消耗品で稼ぐ、確固たるビジネスモデル。社長の一言に、社内に衝撃が走った。

リーマンショック以降、オフィスでの複写機需要は底ばいが続いている。買い替え意欲が鈍いまま、経費削減の王道である「カラーコピー禁止」がさらに追い打ちをかける。かつて利益の源泉だった消耗品や保守サービスでの売り上げは急減した。

そこで注目したのが、デジタル印刷機の市場だ。1970年代から開発に力を注いできたゼロックスは、フルカラーで最高110ページ/分(A4紙換算)を印刷できる機種を持つ。高速機の分野ではHPと双璧だ。

ガートナージャパンによれば、機械と消耗品販売での市場規模は4000億円程度。デジタル機は1台当たり数千万~2億円と極めて高額で、販売先はクレジットカード会社や印刷会社に限られる。旧来の複写機ビジネスの延長上線であり、開拓余地は小さい。ゼロックスが見ているのは、つまりその先なのだ。

消費者ニーズの多様化で、販促物の個別化需要がますます高まっている。DMなど販促用印刷物だけでも、数年で現在の4兆円から6兆円へ成長する可能性があるという。ゼロックスは最低でも、3年後売上高(09年度は9300億円)の3割をこうしたサービス事業で稼ぎたいと考えている。

ゼロックスは目指す自画像を、「ドキュメント(文書)のホームドクター」と例えている。経営者はITには目を向けても、ドキュメントの投資対効果を軽視しがちだ。結果、無駄な印刷物があふれ、肝心の消費者や取引先には、往々にしてメッセージがうまく伝わらない。

だが、ドキュメントが日常の隅々で重要な役割を担っている現実は変わらない。消費者とのつながりにおいては商品ラベルや請求書、そしてDMなど。ビジネスシーンでは会議資料や発注書、設計図面などと、つねにコミュニケーションを介在している。顧客の需要に沿ってドキュメントを取捨選択し、有効な使用方法を助言できれば、そこにゼロックスならではの存在価値を見いだせる。

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