大震災後と酷似するコロナ後の「メンタル危機」 コロナは避難生活と同じ、高まる自死リスク

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調査対象となった自治体では全住民が避難した。情報は乏しく、被災住民はメルトダウンの恐怖や先の見えない避難生活で極限の不安に襲われていた。こうした不安や怒りが自治体職員に向かった。

前田教授らの調査では、多くの職員が「地震や津波、原発事故でさえ、あまり怖くなかったが、住民からの怒りにさらされたことが最もつらく、今でも悪夢のように思い出される」と話した。さらに、仕事と家族のどちらを優先させるかの葛藤がさらなる疲弊を招いた。この選択は職員にとって「踏絵」のように感じられたという。

避難先からの住民の帰還が始まると、職員のメンタルヘルスはさらに悪化した。帰還関連の膨大な業務量が加わり、職員は住民より先に町に帰ることになる。そこでも、職務と家族のどちらを優先するか選択を迫られ、辞職した人もいる。

11年ぶりに自殺者が増えた

前田教授によると、問題はコロナ禍でも同様の事例が起きていることだ。「コロナ禍の日常生活は、身体的にもメンタル面でも極めて不健康な、震災後のような避難生活が続いているのと同じ状態だ」。

メンタル面での病気がさらに進むと、命に関わる事態になる。

「福島県では(原発事故後の)避難生活で、体調の悪化や自死による震災関連死が2300人にのぼった。これは地震や津波で亡くなった1614人を上回る。避難生活が長期化することで、フレイル(身体や認知機能の低下)や生活習慣病、メンタル面でもいろんな病気になる人が増える」と訴える。

警察庁によると、2020年の全国の自殺者数は前年比908人増の2万1077人だった。これまで10年連続で減少していたが、リーマン・ショック後の2009年以来11年ぶりに増加に転じた。

東京都健康長寿医療センター研究所の岡本翔平特別研究員らの研究によると、第1波(2020年2~6月)の自殺者数は過去3年間の同時期と比較して14%ほど減少した一方、同年7~10月は16%ほど増加した。

大規模災害直後は連帯感が強まるなどして一時的に自殺率が低下するが、その後やや遅れて上昇する傾向がある。東日本大震災の被災3県でも同じ傾向があった。

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