大震災後と酷似するコロナ後の「メンタル危機」 コロナは避難生活と同じ、高まる自死リスク

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介護施設でクラスター(集団感染)が多発していることも、介護職員の大きなストレスになっている。

4月にクラスターが発生した都内のある介護施設では、収束後も職員の緊張状態が続いている。施設長は「二度と感染者を出してはいけない」と気が休まるときはないと話す。

「いまだに私たちの何が悪かったのかと考え続けています。コロナは急激に状態が悪くなり、家族も会えないまま亡くなります。もうあの姿は見たくありません。一度地獄を見た施設だから、絶対にコロナを入れてはいけないと毎日繰り返しています」

この施設では、更衣室は2人以上で使わず、フロア間の行き来を避けるなど、職員に対して徹底した感染対策が講じられている。しかし、クラスターが発生すると批判を受けやすい。同施設への新規入居を検討する人の家族などから「なぜ、この施設にわざわざ入るのか」と不安の声が上がることがある。家族らに理解してもらうまで時間がかかり、新しい入居者も入りにくい。実際、施設の稼働率は低下し、経営は悪化した。

自治体職員の約2割がうつ病を発症

行政の過重労働と住民からのバッシングが起こりやすい点も、福島とコロナ禍は似ている。放射能やウイルスは、行政の線引きによって、放射能やウイルスが危険な地域かどうかや、補償の対象になるか否かが決まる。そのため、その線引きに住民の不満が向かいやすい。

前田教授らは2014年、福島県内の2つの自治体の職員を対象に面接調査を行った。一方の自治体では職員のうち15%、もう1つの自治体では20%の職員がうつ病を発症していた。これは一般人の期間有病率(1年間のうちで発症する確率)が約3%であるのに比べてはるかに高い。自死のおそれのある職員も1割近くにのぼった。

この調査で明らかになったのは、福島県内の自治体職員を襲った多重ストレスだ。自らも被災している職員は同時に被災住民を身近で支援し、膨大な職務を長期にわたって遂行しなければならなかった。

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