大震災後と酷似するコロナ後の「メンタル危機」 コロナは避難生活と同じ、高まる自死リスク

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一時的に自殺者が減少するのは、ハネムーン期と呼ばれる「頑張る時期」があるからだ。その後、疲れがたまっていくと無気力感を感じやすくなり、長期化すれば「いつまで続くのか」と感じて心が折れやすい。

前述の岡本氏らの研究によると、自死が増加した7~10月では特に女性は37%上昇し、男性の約5倍の増加率だった。主婦の自死も倍増。年齢別では未成年の自死が49%上昇した。

岡本氏らは、失業が女性や若年層で目立ったことや、前年と比較してDV(家庭内暴力)の相談が顕著に増えたことを上げ、経済や家庭環境の変化が、特に女性と子どもの自死を増加させた可能性があると分析する。

女性のほうが自死リスクは高い

自死遺族の支援を続けている全国自死遺族連絡会の田中幸子代表はこう話す。

「もともと自死の未遂者は女性のほうが男性より多い。これは自死のリスクが高い人が女性に多いことを物語っている。こうした女性の自死予防対策になっていたのが、カウンセリングやカフェ、サロンなど人と話をする場だ。しかし、コロナ禍では直接顔を合わせる機会がなくなった。こうした場が奪われたことは深刻で、女性の自死が増えた要因の1つになっているのではないか」

感染対策を徹底すれば、食事は1人で。家族とも会話をせず、買い物でも誰とも接触しないことが求められる。気晴らしの外出も許されない。自死の危険を抱えている人にとっては悪影響ばかりだと田中さんは指摘する。

「身近な人をいつもよりも気にかけてみてほしい。『大丈夫?』と聞くと、だいたい『大丈夫』と答えるからだめ。『どうしている?俺ちょっと大変なんだけど』と、自分のだめな部分を出すと相手も話しやすくなる。個人的なつながりではそこが必要。だれでも支援者になれる」。

電話やLINEでの些細なやりとりも重要だという。自死は特殊な人に起こるのではないと田中さんは強調する。「絶対に死なないという保証はない。それぞれの命に対して気にかけることが大事だと思う」(田中さん)

ワクチンの接種が始まり、コロナの出口は徐々に見え始めた。しかし、メンタルヘルスの影響はこれから顕在化する可能性がある。収束後の「燃え尽き」を防ぐための支援が急務だ。

井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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