根深い差別の撲滅に「パラ五輪教育」が最適な訳 金メダリストが教員研修で伝えていること

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教員への講師を務めたマセソンさんにリモートで話を聞いた。マセソンさんは東京学芸大教育学部出身で大学1年の時に交通事故で脊髄を損傷、車いすの生活になった。教育実習も行い、小中学校の教員免許を持っている。

1998年の長野パラリンピックでは、スピードスケートのリンクでスケートのブレードがついたそり(スレッジ)を使うアイススレッジスピードレースで金メダル3、銀メダル1を獲得。『I’mPOSSIBLE』日本版の開発責任者でもある。

教員への研修に力を入れる背景には、パラリンピック後のことがある。

「パラリンピック後は予算や人的サポートが削減されるのはわかっていますが、教育は継続していかなければなりません。パラリンピック教育には、多様性を理解したり、差別や偏見を軽減したり、障がいを作り出している環境や構造考えたり、日本が今、向き合うべきエッセンスが盛りだくさんです。

差別や偏見を作り出すのは教育ですが、教育をうまく使えば軽減できる。先生が一度(教材活用を)覚えてしまえば、ずっと教えていただける。先生たちがキーだと思います」

障がい者を初めて見た子の反応はどの国も同じ

マセソンさんはさまざまな国を車いすで訪れてきた。実際に障がい者に向けられる視線も知っている。

「障がいのある人を初めて見たときの子どもたちの反応は、どこの国でも一緒なんです。周りの大人がどんな反応が示すかが問題になるんです。たとえば、日本では『見ちゃだめ、指さないの、失礼だから』と言って何も言わずに立ち去るケースが多いんです。

でも、カナダに来てびっくりしたのは、子どもたちは同じようにけげんな顔をしたり指さしたりしているんですが、親に『うちの子どもは車いすの人を初めて見て質問したいことがあるみたいで』と言われ、子どもが直接質問して、最後はハイタッチで別れる、みたいな場面があること。

日本の子どもたちは、障がい者には聞いちゃいけないことがあると無言の教育をされていて、カナダの子どもはこの人はこういう人なんだと理解するところに違いがあるんです」

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