今の為替は「金利」と「コロナ対応」で動いている 2020年の「需給の厚み」で動く相場は一巡した

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もちろん、アメリカの金利上昇に対してFRB(連邦準備制度理事会)がイールドカーブに今後介入してくれば、ある程度は円安・ユーロ安の動きが止まってくる可能性はある。しかし、いったん介入すれば、日銀のように足抜けが難しくなる以上、市場で観測が浮上しているツイストオペ(短い期間の債券を売って、長い期間の債券を買うことでカーブの勾配を抑える)などは早々には決定してこないのではないかとみる。

また、仮に、そのような政策調整があったとしても「アメリカと日本の金利差が大きい」という事実が解消されるわけでもあるまい。筆者は年内のドル円相場の高値を111円(到達は10~12月期)と予想し、おそらくそれもワンタッチで戻ってくる程度ではないかと考えてきた。

しかし、ワクチン接種と感染者ピークアウトのペースが想定以上に早く、しかも為替市場がそれに目をつけ始めている現状を踏まえると、110円台定着というシナリオも検討に値するのかもしれない。そこまで考えなければならないのかどうかは、まずは3月16~17日のFOMCの声明文、そしてパウエルFRB議長の会見のトーンを見極めたい。
 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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