ボルボとホンダに見る「EVシフト」の二極分化 EV100%宣言のボルボ、BtoBに商機を見るホンダ

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eMaaSについては、筆者はこれまで何度もホンダ関係者と意見交換する中で「具体的なマネタイズ(事業性)の方向性が見えてこない」と指摘してきた。そうした課題解決に向けた、ひとつの答えが今回の発表の中で感じ取ることができた。

それは、フィリピンのロンブロン島で2019年2月から2021年1月まで行った実証データを基にした、「リユースバッテリーの使い道」だ。この実証試験は、風力発電から交換式バッテリーステーションを介して電動2輪車を走らせるものだ。

本田技術研究所・先進パワーユニットエネルギー研究所・エグゼクティブチーフエンジニアの岩田和之氏は「バッテリーのシェアリングにより、バッテリーの劣化のバラつきが少なく、品質が安定した。ホンダとしてバッテリーを資産として持つことで、2次使用ビジネスの展開がやりやすい。これは今後の4輪EV事業でのヒントとなる」と話す。

2輪/4輪+パワープロダクツの総合力

この2次使用ビジネスとは、発電機や芝刈り機、さらには定置型電池などのパワープロダクツを指す。ホンダはこの分野と2輪/4輪が併存する事業体系を持っており、それがEVビジネス全体でのマネタイズに向けたメリットとなる。

ホンダは2020年12月に市販予定車として交換式バッテリー採用のビジネス用電動3輪スクーター「GYRO e:(ジャイロ イー)」を発表(写真:本田技研工業)

岩田氏は「EVではバッテリー事業を切り離すことが重要。電動車への1次利用で初期投資を回収し、2次使用でもバッテリーシェアリングを続けるという中長期的な事業戦略により利益が生まれる」と説明する。

そのうえで「EVを現業の2輪/4輪の事業のように販売店で売る、あるいはパワープロダクツとしてエンジンのようにバッテリーを販売する小売り(B2C)のスキームを根本的に改めるべきだ」と強調した。

こうした本田研究所での技術開発と知見が、ホンダ本社の事業として今後、本格的なEVシフト時代にどのように活かされるのか、その動向を注視していきたい。

ボルボとホンダ、それぞれのEVシフトに対する考え方を聞く中で、当面のEVシフトはプレミアムEV市場とB2Bの商用市場の2軸を中心として進行する可能性が高いことを改めて感じた。

そのため、日系自動車メーカーにとってマスマーケットである一般乗用車市場で、EVシフトに伴う社会変化がどのように動いていくのかは、まだ先が見通せない印象がある。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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