バイデン政権へ影響力高めるもう1人のジョー 中間選挙へ向け左傾化のイメージ払拭に一役

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追加経済支援策の中身は大きく分けると、3つ。第1に伝統的な景気刺激策、第2にコロナ対策に直接関わる支援、第3に支援策に便乗して追加された民主党が長年掲げる政策だ。支援規模以外では民主党穏健派や共和党は3つ目の便乗政策について特に懸念を示してきた。便乗政策の中で最も注目を集めたのが最低賃金引き上げだ。

バイデン政権は上院の財政調整法を利用する場合、そもそも時給15ドルへの最低賃金引き上げは議会職員である議事運営専門員(パーラメンタリアン)の判断で、最終法案に盛り込まれないと見ていた。財政調整法の適用範囲は、歳出、歳入、債務上限に関わる分野などに限定されている。にもかかわらず、あえて法案に含めることを支持してきたのは、長年、急進左派が強くこだわっている政策であるからだ。

パーラメンタリアンは各政策について中立的な立場で財政調整法に盛り込むことが適切か判断を下す。その際の判断基準は、ウェストバージニア州選出という意味ではマンチン氏の大先輩に当たるロバート・バード元上院議員が作成した「バードルール(Byrd rule)」だ。パーラメンタリアンの審査はバードバス(Byrd(bird) bath:鳥の水浴び)、そしてその過程でバードルール違反として却下(drop)される行為はバードドロップ(Byrd(bird) drop:鳥の糞)と議会職員の間では呼ばれている。

2人のジョーを救ったパーラメンタリアン

バイデン政権は党内団結のためにも、急進左派と穏健派の微妙なバランスを取らなければならない。だが、中立な立場のパーラメンタリアンといった第三者が判断するのであれば、急進左派も政権に対し文句をいえないであろうとの計算があった。したがって2月25日、パーラメンタリアンが最低賃金をバードドロップしたことはバイデン政権にとっては理想の結果であったのだ。

仮にパーラメンタリアンが時給15ドルの最低賃金引き上げを認めていたら、バイデン政権にとって厄介なこととなっていた。その場合、上院では少なくとも穏健派のキルステン・シネマ氏(アリゾナ州選出)とマンチン氏の民主党議員2人が支援策に反対票を投じ廃案となるか、あるいは、可決に時間を要することが想定されていたからだ。バイデン政権の重要法案を廃案に追い込んだとすれば、民主党穏健派議員は民主党支持基盤からの批判を受け、苦境に陥っていたであろう。

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