バイデン政権へ影響力高めるもう1人のジョー 中間選挙へ向け左傾化のイメージ払拭に一役

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だが、実際にはパーラメンタリアンの判断はあくまでも助言にすぎず法的拘束力は伴っていない。議会ではカマラ・ハリス副大統領がパーラメンタリアンの判断を覆すシナリオに関するメモが出回っていた。特に下院の急進左派が最低賃金の引き上げを長年支持してきた同副大統領に圧力をかけていたのは確かだ。

しかし、急進左派からの圧力は見られたものの、追加経済支援策が崩壊する事態までには発展せず、法案可決に向けて民主党は団結し着実に前進している。バイデン大統領にとって理想通りの展開となっている。

左傾化を避け、中間選挙で三冠を堅持できるか

政権と同じ政党が上下両院を握っている場合、大統領は任期1期目の中間選挙で上院あるいは下院で多数派の座を失うケースが多い。たいていは与党内の左派あるいは右派の行きすぎた政策に対し、国民からしっぺ返しを食らうものだ。

議会で共和党の支持を得られず民主党のみで間もなく成立する追加経済支援策も、同様の運命にあるのか。今後、共和党が同支援策は急進左派の望むリベラルな政策であると烙印を押す格好でイデオロギーをめぐる争いを仕掛けるであろう。

一方、民主党は危機時に国民に人気の現金給付などに共和党が反対したことを訴えて反論するであろう。そもそも現金給付はトランプ前政権も支持していたことだ。追加経済支援策への国民の高い支持率が、中間選挙に向けてどう推移するか注目だ。15ドルへの最低賃金引き上げ断念に加え、タンデン氏指名承認の断念は一見、バイデン政権の失敗とも見えるが、左傾化のイメージを払拭するうえで、バイデン政権にとって中長期的には喜ぶべきことかもしれない。

今年10月以降の2022年度予算では、バイデン政権の次の重要法案である環境に軸足を置いたインフラ整備法案を再び民主党のみで可決しようとするだろう。マンチン氏をはじめ穏健派の抵抗によって政策の左傾化を避け、同時に経済回復の追い風が吹けば、民主党は2022年中間選挙での敗北を免れるかもしれない。アメリカ政治の行方はパンデミック、経済の行方などさまざまな不確実性がつきまとうが、確実なのは2人のジョーが中間選挙までの約20カ月間、ワシントンの政治を大きく動かしていくことだ。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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