バイデン政権へ影響力高めるもう1人のジョー 中間選挙へ向け左傾化のイメージ払拭に一役
いずれも「上院の生きもの」とも呼ばれるバイデン大統領と共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は、上院で24年間ほど肩を並べて働いた仲だ。お互いの信頼関係は揺るぎがないとも報道されてきた。ジョージア州決戦投票により民主党の上院奪還が確定するまでは、ワシントンの「パワーカップル」になるとも称され、超党派合意に期待感が高まっていた。
だが、その期待は甘く、2極化社会における議会には個人的な信頼関係では乗り越えられない壁があることが明らかになってきた。追加経済支援策のように国民に人気の法案でさえ、議会で超党派の合意を得られていない。そのことは、今後4年間の政権運営の厳しさを示唆し、多くの場面でバイデン大統領は民主党のみで可決できるものに頼らざるをえない。したがって今日、バイデン政権にとって重要なのは、超党派合意よりも民主党の党内団結となっている。
民主党穏健派ジョー・マンチンの影響力
民主党がホワイトハウス、そして上下両院を握る「三冠(トライフェクタ)」が実現したワシントン政治において、新たな「パワーカップル」は2人のジョーだ。1人はもちろん、ジョー・バイデン大統領。そして、もう1人は民主党穏健派の代表格ジョー・マンチン上院議員だ。その影響力は議会民主党トップのナンシー・ペロシ下院議長やチャック・シューマー上院院内総務をも上回ると指摘される。
トライフェクタであっても、民主党内では急進左派と穏健派で政策は大きく異なり一枚岩ではない。特に上院では民主党50議席・共和党50議席で、カマラ・ハリス副大統領の決定票でぎりぎりの過半数を得る窮屈さで、民主党議員の造反を1人も許す余裕がない。バイデン政権は党内で最も勢いがある民主党急進左派の望む項目を多々、政策目標に盛り込んでいるが、大幅な左傾化からの防波堤となっているのがマンチン氏を筆頭とする数名の民主党穏健派議員だ。
マンチン氏は、人口が日本の札幌市よりも少ない約180万人のウェストバージニア州選出の上院議員だ。同州ではトランプ大統領が2016年も2020年も圧勝し、2020年は全米でワイオミング州に次ぐ大差で勝利したレッドステートだ。ウェストバージニア州選出の政治家は共和党ばかりで同氏は孤立している。
マンチン氏は政策によっては同じ政党の急進左派よりも、共和党穏健派に近い。ホワイトハウスは、コロナ対策をはじめ重要な政策で民主党穏健派の中でも特に同議員の動向を注視している。直近ではリベラル派のニーラ・タンデン氏を行政管理予算局(OMB)局長に指名する案を撤回させるなど、人事面でもマンチン氏は影響力を行使している。
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