もちろん、バイデン政権が拡張的な財政政策を掲げていることは、昨年からすでにはっきりしていた。
同政権による財政政策などがアメリカの経済成長率を押し上げると筆者は予想しており、大統領選挙直後から株高が続くと見込んだが(2020年11月13日のコラム「2021年も米国株は上昇するといえる充分な理由」)、ほぼ想定通り、年明け以降も株式市場は順調だ。
債券市場の投資家は、株式市場の値動きを横目にしていたが、アメリカの経済回復シナリオに対して総じて懐疑的にみていたのだろう。そして、連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和強化が続くので、低金利が永続するかのような幻想が広がっていたように思われる。
なぜ債券市場の心理はインフレ警戒へと転じたのか
その結果、FRBの金融緩和と政府の財政政策が、将来の経済回復やインフレ上昇をもたらす、経済の教科書通りの「動的な視点」が希薄になっていたとみられる。
だが政策発動によって、経済成長率が高まるのはむしろ必然である。株式市場の投資家は景気循環の変動に敏感な一方で、債券市場がこの変化に鈍感になるケースはこれまでもたびたびあった。今回、それが繰り返されたのだと筆者は認識している。
また、2月中旬までの長期金利上昇は、インフレ期待の上昇が主たる要因だった。
ただ2月末に見られた大幅な金利上昇は、FRBの継続的な利上げが2023年に始まるとの予想が織り込まれながら、年限が短い短中期金利を含めて金利全般が上昇した。FRBメンバーの想定よりも早い2023年からの持続的な利上げを織り込むまでに、債券市場の心理がインフレ警戒方向へと真逆に転じたのである。
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