コロナ禍で生活苦に追いやられる韓国の青年 相次ぐ失職に借金増大…再就職も難しい20代

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キムさんは足りない生活費を賄おうと、韓国奨学財団から受け取る生活金貸出金150万ウォン(約14万3000円)とクレジットカードの短期ローン100万ウォン(約9万6000円)を借りた。キムさんは「1年間に2回も退職させられて苦しい生活が続き、うつ病の治療まで受けた」とこぼす。

チョンさんやキムさんのように、一時的であっても失業保険を受け取ったケースは、まだマシなほうだ。韓国南西部・光州市の英語学校の講師として働いていたイ・ジュヒョンさんは、2020年1月に学校が廃業し失職した。学校長は週末にも1日12時間講義せよと強要していたが、雇用保険などを支払っていなかった。彼女は家庭教師などで生計をつないだが、それさえも途切れてしまった。


イさんは「雪だるま式に増えていったカードローンの利子をこれ以上返すことができず、債務の返済調整を信用評価機関に相談している。私のように生活の糧を得ようと四苦八苦している人たちには、今の状況は就職の糸口さえつかめない状態」とため息をつく。イさんには、退職した両親と精神障害を持つ姉がおり、彼らに生計の補填は期待できない。彼女はクレジットカード2社のカードローンを利用していたが、借金は1000万ウォン(約96万円)にまで増えた。結局、彼女は家賃6カ月分を滞納したまま、両親と姉が住む実家に仕方なく戻った。

20代のローン残高が急増、再就職での返済も厳しい

韓国の青年が直面している現実の冷たさは、統計からも確認できる。2020年1月20日、韓国国会政務委員会所属の与党議員を通じて入手した資料がある。これは国内18銀行における「年齢別信用貸し出し現況」(金融監督院)だ。

これによると、2020年の20代の信用貸し出し残額は9兆6000億ウォン(約9200億円)で、前年の7兆4000億ウォン(約7100億円)と比べ29.7%増加している。これは、他の年代と比べても増加率が最も高い。30代も52兆1000億ウォン(約5兆円)で、前年の41兆6000億ウォン(約4兆円)と比べ25.2%増えた。一方、40代から60代以上の年齢層の増加率は10%台にとどまっている。

ソウル大学経済学部のアン・ドンヒョン教授は「青年層の債務は、現在のような氷河期中の雇用市場では再就職後に返済することが難しい。他の年齢層と比べ金額自体は少ないが、コロナ禍が長期化すれば大きな打撃となる可能性が高い」と見る。

とくに所得が少ない20代の場合、2020年のカードローンとリボルビング支払いの残額が大きく増えている。韓国の野党議員が金融監督院から入手したクレジットカード8社の「年齢別カードローン残額・リボルビング残額現況」によれば、2020年に20代のカードローン残額は1兆1410億ウォン(約1100億円)で、前年の9630億ウォン(約921億円)と比べ18.5%増、リボルビングの残額も前年比6.8%増えている。これもまた、他の年齢層と比べ増加率が最も高い。

韓国・檀国大学経済学科のキム・テギ教授は「2020年に韓国政府が打ち出した対策は、青年向け手当など支援金的な性格が強い政策にすぎない。こづかいをあげるといった対策ではなく、青年層への雇用そのものを考えた特段の雇用創出対策を出すべきだ」と指摘する。
(「ソウル新聞」2021年2月25日)

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