フクシマとコロナが露わにした日本の根本弱点

国民の安全を保障する体制をいまだ作れてない

福島原発事故の際は、班目春樹原子力安全委員長が菅首相の「オレの質問にだけ答えろ」との威圧的な口頭試問に委縮してしまい、科学助言者として効果的な役割を果たすことができなかった。それに比べて今回、専門家会議は自らが“前のめり”と自嘲気味に反省するほど存在感も影響力も大きい。

ただ、専門家会議は、感染拡大抑止という国民の「安全」を最重要の政策目標とし、それぞれの判断を科学的根拠をもって説明できるかどうかを重視している。一方、官邸は、国民の「安全」に加えて「安心」を求める。世論調査やマスコミの論調に投影される国民の「不安」に敏感に反応する。全国一斉休校や「最低7割、極力8割」の接触抑制策や緊急事態宣言解除の基準制定も、官邸は専門家の提案を時に無視し、退け、和らげるなどさまざまな形で「押し切った」。

それは、「安全」と「安心」のどちらにどの程度重点を置くかのバランスの問題でもあるが、「小さな安心を優先させ、大きな安全を犠牲にする」福島原発事故で見られた安全規制体制と同質の「安心」に傾斜したリスク観と政治文化がここには横たわっているだろう。

有事に当たっての強制力と執行力がないのは危険

ここでの課題を一言で言えば、有事の際の政府(さらには政府と地方自治体)の権限と責任のあり方、さらには政府と国民の間の受益と負担の関係がいまだに整理できず、それに対する国民的合意が生まれていない、ということである。

政府が有事に当たっての強制力と執行力を法的に保持していない事態は危険である。なぜなら、そのような場合、政府は、企業や国民の自主的な献身的犠牲を要求するだろうからであり、それは市民の自由を法的裏付けなしに奪う可能性があるからである。

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