日本の「ミャンマー宥和外交」は機能しているか 今こそミャンマーとのパイプを機能させよ

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国軍は2017年以来、少数派イスラム教徒ロヒンギャへの迫害で国際的に強い非難を浴び、ジェノサイド(民族大虐殺)条約違反として国際司法裁判所に訴えられている。

丸山大使は2019年12月、ミャンマーの地元メディアの取材に対して、「国軍にはジェノサイドやその意思があったとは思わない」「ミャンマー政府も国軍も、すべてのイスラム教徒『ベンガリ』を殺そうとしたとは思わない」と語ったと報じられた。

ちなみに、朝日新聞の染田屋竜太記者によると、ベンガリはバングラデシュから来た人々を意味し、ミャンマー国籍を与えられていないロヒンギャが「差別的」として嫌う表現だ。

戦前から続くミャンマーとのつながり

ジェノサイドはなかったと断定する丸山氏の発言は人権団体から批判を浴びたが、丸山大使の独断というわけでもない。ロヒンギャ問題でミャンマー政府への非難決議が採択された2019年9月の国連人権理事会で、欧米など37カ国が決議に賛成する中、日本は棄権した。

ロヒンギャ迫害に関し、アメリカは2019年7月、ミンアウンフライン総司令官らに渡航禁止などの制裁を科した。日本の防衛省はその3カ月後、同総司令官を日本に招待し、菅義偉官房長官(当時)や茂木敏充外相らが会談、安倍晋三首相(同)も面会している。

日本とミャンマーは戦前から深いつながりがある。独立の父とされるスーチー氏の父親アウンサン将軍や、長く独裁体制を敷いたネウィン将軍らを日本軍の特務機関が支援した歴史もある。

ミャンマー(当時はビルマ)は太平洋戦争当時、インパール作戦の舞台となるなど戦時中は同国に苛酷な負担を強いた。戦後、戦時賠償として2億ドルを支払い、その後も政府開発援助(ODA)をつぎ込んできた。

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