日本の「ミャンマー宥和外交」は機能しているか 今こそミャンマーとのパイプを機能させよ

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2011年に民政移管するまで民主化運動を長く弾圧した軍政に対し、欧米各国が援助を止め、経済制裁を科す中で、日本はその輪に加わらず人道援助などの形でミャンマー支援を続けてきた。

日本政府は今回、とりあえずODAの新規案件の停止を検討しているという。このタイミングで新規案件を打ち出せば、世界中から批判されることは明らかで、当然の措置だ。問題は継続中のインフラ案件などを止めるかどうか。そして、制裁に踏み込むかどうかである。

「制裁で中国寄りになる」を懸念

アジア各国で軍や独裁政権が民主化を弾圧し、人権をないがしろにしても、日本政府は戦後一貫して制裁など積極的な対応を取ることはなかった。太平洋戦争でとんでもない災禍をもたらした負い目もあったであろう。アジア市場で活動する日本企業への影響に配慮した可能性もある。

加えて近年は「中国寄りになる」という理由が頻繁に語られる。欧米と並んで独裁や強権を強く批判し、制裁を科せば、その政権は中国に頼ることになる。日本政府が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想にも影響するという理屈だ。

日本政府は第2次安倍政権発足直後の2013年1月、ASEAN外交5原則を発表した。自由や民主主義、基本的人権など普遍的価値の実現をうたい、「価値観外交」を掲げた。だがこの原則を知る人は、ASEAN内はもとより、日本国内でもごく少数だろう。

タイ軍が2014年、民選政権をクーデターで放逐した後、日本政府は他の主要国に先駆けて首謀者であるプラユット首相を日本に招いた。日本の首脳や外交官が、ベトナムやラオス、カンボジアといった権威主義的政府の首脳と民主主義や基本的人権について語り合ったという話も聞かない。価値観外交は中国に対抗するため持ち出したものだろうが、日本の外交に原則などないことは見透かされている。

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