黒子からブランドに 日本企業の友か敵か 台湾電子企業・激安PCの“正体”
都内の家電量販店のパソコン(PC)売り場に、多くの買い物客が足を止める商品があった。「ウワサの激安PCだ」「また品切れか」--。話題の主は、台湾企業のアスーステック(華碩電脳)が1月に発売した小型ノートPC「EeePC」だ。
業界最軽量級の920グラム、ウィンドウズ搭載機としては破格の安値の4万9800円(標準小売価格)で人気爆発。「発売から3日で、1カ月の販売目標だった1万台が売れた」(アスースジャパンのセールス&マーケティング事業部)。
一足早く昨秋に発売した欧米や台湾などでも人気で、昨年末までの約3カ月で35万台を販売。米調査会社のディスプレイサーチによれば、この影響で2007年9~12月期における同社のノートPC出荷台数は1・5倍に急増、業界上位10社で最も高い伸びだったという。
アスース関係者は「圧倒的な価格と使いやすさで、子供やお年寄りのような従来PCと縁遠かった消費者に食い込む。新興国市場も狙う」と意気込む。すでに米国の学校やアフリカ・ガンビア共和国の政府からも大口注文が舞い込んでいる。08年の世界での販売目標は500万台(うち日本は60万台)。NECと富士通の07年の合計出荷台数に匹敵する。
電子製品で台湾ブランドの台頭が著しい。たとえば、スマートフォン(高機能携帯電話)の市場ではHTC(宏達国際電子)が躍進。ウィンドウズOS搭載機種では世界首位のシェアを握っている。
さらに08年は、米グーグルが開発を主導する携帯電話向けソフトウエア群・アンドロイドを搭載した端末を世界でいち早く発売する。この分野では日本企業ばかりか、韓国のサムスン電子も寄せつけない。
競争激しい液晶テレビでも、米国市場で昨夏、新興企業のビジオが首位シェアに躍り出た。在米ベンチャーとされる同社では、実は二つの“台湾企業”が水平分業している。
在米台湾人が経営するビジオは、企画販売・サービスを手掛けるファブレス企業。製品は台湾の液晶ディスプレーメーカー・瑞軒科技(アムトラン)が主に受託生産している。アムトランはビジオの大口株主でもあるから、経営・製品・資本の3要素が“バイ台湾”なのだ。
大手ブランドの6割程度という驚異的な低価格で米国市場に急浮上、日系家電メーカー幹部を「無名ブランドに追い抜かれるとは」と歯ぎしりさせたビジオ。今夏には日本に参入するという観測もある。
中小型企業が専業化 日本企業との分業で成長
これら市場の最前線で躍進する台湾ブランドには、実は共通する“背景”がある。いずれも従来は部品メーカーや製品の受託製造がメインで、主要顧客は日米欧の大手企業だった。いわば、電子産業チェーンの川上で大手ブランドを支えてきた“黒子”が、市場の最前線に躍り出てきた。米調査会社・アイサプライの主席アナリスト、アダム・ピック氏はその背景について、「台湾企業は少しでも利益を得ようと、大胆に立ち位置を移している」と指摘する。