黒子からブランドに 日本企業の友か敵か 台湾電子企業・激安PCの“正体”

薄型テレビで年間2割安など、電子製品全般を襲う価格下落の波。製品ブランドにとってきつい値下げ圧力は、川上企業にはさらに重圧だ。この環境の中、台湾企業の間では低価格かつ高付加価値のブランド製品で自ら市場を開拓する動きと、川上企業としてさらに巨大化することで、規模のメリットを追求しようという動きが顕著になっているのだ。

巨大化の代表例が、半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)や、EMS(電子機器製造請負サービス)最大手の鴻海精密工業(フォクスコン)、液晶パネル大手の友達光電(AUO)などだ。自社事業の前後の工程を手掛ける企業や同業中堅を積極的に買収している。

今や台湾では、電子産業が国内製造業生産額の4割を支える。PCは9割が台湾企業製となるなど、世界市場への存在感も圧倒的な“電子の島”だ。そもそも、人口2200万人余りのこの“小国”がなぜ電子産業でここまで成長できたのか。

富士通総研・経済研究所の朱炎・主席研究員は、韓国が財閥系大企業を軸に電子産業を育成したのと比較し、「台湾の牽引役は中小型の民間企業。個々の企業が製品分野や工程ごとに専業化するほうが投資効率がよかった。この結果、日米の大手企業と分業が進み、全体として電子産業が集積した」と指摘する。また、経済発展が進んで労務コストの割安感が薄れたときも、中国に周辺企業と足並みをそろえて生産移転したことで集積効果と競争力を維持した。

特に日本企業とは1980年代から技術移転を受けていたこともあり、ITバブル崩壊直後は、投資余力のない大手電機と分業する“蜜月”に。05年ごろ、日本側が自前投資を再拡大し始めた矢先には台湾企業と競合を試みる局面もあったが、生産規模の差が歴然とした現在は、もう一段の分業を模索する動きが出ている。

「台湾企業との連携がさらに重要になるのは確実」。半導体国内2位のルネサステクノロジの伊藤達会長は断言する。同社は台湾への生産委託を拡大することで、自社の設備投資負担を抑制する戦略を続けている。台湾企業と協業する理由については、「一つは生産インフラを確保するため。さらに、中国市場向けのビジネスを展開するパートナーでもある。中国市場など産業動向に対する情報力は日本企業にはなかなかない」と評価し、“台湾力”をどう取り込むかは「自社にとっての基本戦略の一つ」と言う。

実は07年は、NECや富士通など日本の電機大手が足繁く“台湾詣で”した1年だった。「うちの工場を買いませんか」「生産委託をしたい」「合弁はどうですか」--。しかし現在のところ、“成約”した大型案件は見当たらない。台湾企業の幹部からは「生産を肩代わりしてほしいという以上の戦略はなく、ウィン・ウィンの発想がない」「いざ“検討しましょう”と答えても、次の意思決定が遅い」との声が漏れる。

産業の厳しい変化とともに機敏に活路を探る台湾勢。現在の提携相手が将来“川下”に下り、ライバルブランドに育つ可能性もある。だが、その機敏さについていけなければ、日本企業は産業の変化そのものに取り残されることになりそうだ。
(週刊東洋経済編集部)

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