大手私鉄「新序列」、旅客も利益も激変の3Q決算 関東と関西で立場逆転、利益率下位勢に共通点

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阪神は2009年に阪神なんば線が全線開業し、尼崎と大阪難波間が乗り換えなしで結ばれた。また、近鉄奈良線との相互乗り入れも実現し、大阪南部の人が神戸に向かう場合に阪神線が選択されるケースが増えた。このため、2009〜2018年における輸送人員の伸び率は大手私鉄トップで、2018年度もその余波がまだ残っている。

一方で最も伸び率が低いのは近畿日本鉄道のマイナス0.1%。エリア内にはローカル圏も含まれ、人口減少の影響を受けている。近鉄に続くのは、阪急電鉄、京阪電鉄、南海電鉄と関西勢がズラリ。やはり東京圏より一足早い人口減の影響を受けたものとみられる。

コロナ禍で様変わりしたランキング

続いて2020年10〜12月。どの会社も輸送人員は減少しているが、その中でも鉄道輸送人員の減少率が最も低かったのはどの会社だろうか。1位は阪神電鉄でマイナス18.1%だ。コロナ禍でもなんば線開業のメリットが生きているようだ。2位は近鉄グループHDのマイナス18.8%。2018年度のワースト1位から一気に浮上した。3位は阪急電鉄がマイナス18.9%、2018年度では下位にあった関西勢が上位を占めたことになる。

では、10〜12月期における輸送人員の落ち込みが最も厳しかったのはどの会社だろうか。それは2018年度の伸び率トップだった東京メトロで、マイナス29.2%だ。コロナ禍においては観光、出張などの長距離需要が落ち込む傾向にあり、実際にJRでは東海道新幹線を抱えるJR東海のマイナス55%を筆頭に、軒並みマイナス30%台の落ち込みとなっている。東京メトロは近距離移動が主体とはいえ、コロナ禍によって23区内の移動が急激に落ち込んだことが輸送人員減少の理由のようだ。

ワースト2〜5位を見ると、京王電鉄、東急電鉄、小田急電鉄、京急電鉄と関東の大手私鉄が並ぶ。上位が関西の私鉄、下位が関東の私鉄とはっきり分かれた。その理由として考えられるのはテレワークだ。パーソル総合研究所が11月に実施したテレワークに関する調査によると、都道府県別の実施率は東京都が45.8%に対し、大阪府は24.4%。テレワークの進展の差が、輸送人員の変化の違いに表れたといえる。

なお、世界的な新型コロナの拡大で世界の航空需要は鉄道以上に落ち込んでいる。羽田、成田、関空といった主要な国際空港の利用者も激減しており、空港アクセス鉄道の出番も減ったはずだが、名鉄、南海、京成、京急といった空港アクセスを抱える鉄道会社の輸送人員減少率はマイナス19.5〜マイナス23.7%の範囲にとどまっている。少なくとも輸送人員に関しては、空港利用者の減少が与える影響は限定的といえる。

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