大手私鉄「新序列」、旅客も利益も激変の3Q決算 関東と関西で立場逆転、利益率下位勢に共通点
今度は売上高営業利益率について見ていく。まず、新型コロナの影響がない2018年度の実績から。利益率1位は阪急の25.9%、次いで西武鉄道、東武鉄道、相模鉄道、京急と続く。ワーストは西鉄の12.6%。その後は京王、東急、南海という順だ。
利益率が高いことは効率的な経営が行われていることの証しであるが、一方で、安全運行のための設備投資を重ねれば減価償却費がかさむ。割安な運賃は利用者にとってはありがたいが、その分売り上げは減り売上高営業利益率は低くなる。その意味では、売上高営業利益率は各社の戦略の違いともいえる。
2020年10〜12月期の売上高営業利益率の順位は2018年度とは様変わりしている。鉄道会社の中には四半期決算における営業収支について、鉄道事業をバス事業やタクシー事業と合算して運輸業、交通事業といった名称で開示し、鉄道事業のみの収支を開示していない会社もある。そのため、鉄道事業のみの収支とバスやタクシーを含む収支が混在しており、ランキングはあくまで便宜上のものであることにご留意いただきたい。
空港路線の売り上げ減少を反映
売上高営業利益率を高い順に見ると、トップは東武鉄道の10.5%。2位は阪急阪神HDの7.6%となった。東武と阪急は2018年度の利益率上位に位置しており、輸送人員の落ち込みも各社の中では軽微だったことがこの結果につながったといえる。3位は東急の5.2%。4位は名鉄の0.9%。ここまでが営業黒字となった会社で、それ以下はすべて営業赤字である。5位は小田急のマイナス0.2%で惜しくも赤字だったが、「鉄道業には箱根登山鉄道や江ノ島電鉄も含んでおり、小田急だけなら営業黒字」(IR担当者)という。
売上高営業利益率を低い順に見ると、ワースト1位は京急のマイナス13.4%。次いで南海のマイナス10.3%、京成のマイナス8.5%という結果になった。この3社はいずれも羽田、関空、成田といった空港と都市部を結んでいる。南海の「ラピート」や京成の「スカイライナー」といった空港アクセス列車の特急料金が減少したことで、輸送人員の減少以上に売り上げが減ったことになる。
京急は空港線の工事に要した費用を回収するため通常の運賃に加算運賃を上乗せしている。2019年秋に加算運賃を大幅に引き下げたとはいえ、現在も一部残っており、空港線は京急のほかの路線よりも旅客1人あたりの採算性は高い。利益率の低下はその影響を受けたといえる。
輸送人員が大幅に減少したことで、鉄道会社の序列は激変した。はたして新型コロナが収束すれば元の序列に戻るのか、それとも、序列はこのまま変わり続けるのか。今年4月末から5月中旬にかけて発表される各社の2020年度決算の動向を注視する必要がある。
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