バーニーズ「日本1号店」撤退が示す深刻課題 セブングループの中での立ち位置も見えない
とくに業界内で苦戦がささやかれているのが、2016年にオープンした六本木店だ。セブン傘下となってから唯一新規出店した店舗で、東京ミッドタウンの前の一等地に約580坪弱の広大な売り場を構える。ただ、「富裕層や外国人客を狙ったのだろうが、ブランドイメージ自体が陰っている分、立地を生かし切れずに閑散としている」(複数のアパレル企業幹部)。
そもそもセブンは、コンビニやGMSなど同社の主力事業とは関係性の薄いバーニーズジャパンをなぜ買収したのか。
株式取得時のリリースでセブンは、傘下のそごう・西武とのシナジー効果が期待できると強調。「バーニーズジャパンの持つ商品調達力や売り場編集力のノウハウを活用して商品開発力を強化する」としていた。また、実店舗とネット通販を融合する「オムニチャネル」分野との連携も視野に入れていた。
完全子会社化後、セブンは西武渋谷店の元店長の高橋幸智氏をバーニーズジャパンの社長に据え(2019年に退任)、取締役にもセブン出身者を送り込むなど、人材面でのてこ入れを図った。が、肝心のそごう・西武との商品開発の面での協業は現在までほとんど進んでいない。
子会社として事業を継続する
複数の関係者によると、バーニーズ買収はセブンの鈴木敏文・名誉顧問の次男で、オムニチャネル推進の中心的役割を担っていた鈴木康弘・元取締役の意向も強かったという。だが、敏文氏と康弘氏が2016年に会長と取締役を相次ぎ退任し、両氏の進めてきたオムニチャネル戦略が方向性を失う中、バーニーズをどう生かすかも方向性が定まらないようだ。
セブンの広報担当者は「引き続き完全子会社として事業を継続する。実店舗だけでなくネット販売も含めて、売り上げ拡大に向けた商品・サービスの展開手法を考えていきたい」と話す。ただ、コロナ禍でバーニーズが店舗を構える都市中心部への客足の戻りは鈍く、新宿店撤退だけで収益を急改善させるのは難しいだろう。
昨年、セブンはコロナを受けて中期経営計画の公表を見送ったが、今年4月に発表する予定。グループの中で立ち位置が定まらない“高級ブランド”の身の振り方が問われている。
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