その結果、カスタマイズされた学習は、
(1)それが持続される限りにおいてIQ等(認知スキル)の向上につながるが、やめてしまうと効果が失われる可能性がある
(2)短期間実施しただけでも、学習意欲や自尊心といった非認知スキルが長期的に改善される
ことがわかった。
非認知スキルを高めることは、大人になってからの幸せや経済的な安定につながるとされており、カスタマイズされた学習はこの点からも望ましい可能性がある。
このような研究は海外で先行しており、国内における研究結果が待たれるところである。中室教授らは、全国知事会「これからの高等学校教育のあり方研究会」において、宮城県・宮崎県・熊本市・長野県・三重県の8校・約600名を対象に現在実証研究を行っており、結果が注目される。
長期的な影響は研究途上
カスタマイズされた学習のメリットをこれまで紹介してきたが、カスタマイズによる影響は研究途上にあり、特に長期的な影響についてはわからないことも多い。例えば以下のような点が議論になると考えられる。
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・大人になってからの幸福度や経済的安定度等に、実際にどのような影響があるか?
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・鉛筆・ノートによる学習と、タブレットを利用した学習では、習熟度等にどのような差が出るか?
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・子どもの育ち(視力・姿勢や生活習慣等)にどのような影響を及ぼすか?
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・カスタマイズされた自習時間等が増えた場合、教室における子どもたちの人間関係や、社会性への影響はどのようになるか?
これらについては、「1人1台」実現によって集まる膨大なデータを客観的に検証し、改善につなげていくEBPM(Evidence-based Policy Making、エビデンスに基づく政策立案)が重要である。そのためには、どういうデータを蓄積するか、事前の設計・準備が欠かせない。
例えば前述の全国知事会や、兵庫県尼崎市の「学びと育ち研究所」のように、様々な専門家と連携しながら調査設計・分析に取り組むことも有効だろう。
これまでのアナログな教育方法の方が優れているケースも当然ながらありうると考えられ、教育行政においては、デジタルとアナログの最適な融合点を探る努力が今後求められる。
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