小中学生にパソコン「1人1台」は何をもたらすか 学習内容をAIが「カスタマイズ」するメリット

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その結果、カスタマイズされた学習は、

(1)それが持続される限りにおいてIQ等(認知スキル)の向上につながるが、やめてしまうと効果が失われる可能性がある

(2)短期間実施しただけでも、学習意欲や自尊心といった非認知スキルが長期的に改善される

ことがわかった。

非認知スキルを高めることは、大人になってからの幸せや経済的な安定につながるとされており、カスタマイズされた学習はこの点からも望ましい可能性がある。

このような研究は海外で先行しており、国内における研究結果が待たれるところである。中室教授らは、全国知事会「これからの高等学校教育のあり方研究会」において、宮城県・宮崎県・熊本市・長野県・三重県の8校・約600名を対象に現在実証研究を行っており、結果が注目される。

長期的な影響は研究途上

カスタマイズされた学習のメリットをこれまで紹介してきたが、カスタマイズによる影響は研究途上にあり、特に長期的な影響についてはわからないことも多い。例えば以下のような点が議論になると考えられる。

  • ・大人になってからの幸福度や経済的安定度等に、実際にどのような影響があるか?
  •  ・鉛筆・ノートによる学習と、タブレットを利用した学習では、習熟度等にどのような差が出るか?
  • ・子どもの育ち(視力・姿勢や生活習慣等)にどのような影響を及ぼすか?
  • ・カスタマイズされた自習時間等が増えた場合、教室における子どもたちの人間関係や、社会性への影響はどのようになるか?

これらについては、「1人1台」実現によって集まる膨大なデータを客観的に検証し、改善につなげていくEBPM(Evidence-based Policy Making、エビデンスに基づく政策立案)が重要である。そのためには、どういうデータを蓄積するか、事前の設計・準備が欠かせない。

例えば前述の全国知事会や、兵庫県尼崎市の「学びと育ち研究所」のように、様々な専門家と連携しながら調査設計・分析に取り組むことも有効だろう。

これまでのアナログな教育方法の方が優れているケースも当然ながらありうると考えられ、教育行政においては、デジタルとアナログの最適な融合点を探る努力が今後求められる。

霜越 直哉 野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 主任コンサルタント

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しもこし なおや / Naoya Shimokoshi

1982年、茨城県つくば市生まれ。東京大学公共政策大学院を修了後、2006年に野村総合研究所に入社。経営コンサルティング部、グローバル人材開発室などを経て現職。専門は、人材・教育政策、組織改革・組織開発、公共領域における政策実行支援など。野村総合研究所のイノベーションマガジン「NRI JOURNAL」にも随時寄稿中。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事