奥歯がない人ほど認知症になりやすい衝撃事実 1本なくなるだけでボケが始まり、ボケが進む

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そして、奥歯を失うと、先にもお伝えしたように、噛み砕く能力が大きく低下し、食べ物を細かくすりつぶすことができなくなります。ちゃんと噛まない食べ物を飲み込むことになり、結果的に消化器官に過度な負担をかけてしまうことになります。消化器官以上に深刻な影響を受けるのが「脳」です。奥歯を失うとボケやすくなります。

十数年前、ある介護老人保健施設で、認知症の方のお口の中を拝見する機会がありました。驚いたことに、多くの方はほとんど歯が無く、義歯も使っていませんでした。

どうして歯が無いままにしておくのだろう、と疑問を抱きましたが、そのときは、「認知症になったから、歯を失ったのだろう」と単純に思っていました。しかし、調査を行うと、当初の思い込みは見事にくつがえされることになります。

じつは、彼ら彼女らは認知症になったから歯が無いのではなく、「歯を失うことで認知症につながった」ということが明らかになったのです。

『ボケたくなければ「奥歯」は抜くな』(青春出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

私は、2010年から2012年にかけて、認知症の判定を受けていない65歳以上の高齢者4425人を対象に行った過去の追跡調査のデータ(2003年〜2006年)を使って、「歯の状態と認知症の因果関係」の分析を行いました。

きっかけは、医師・医学者であるとともに社会福祉学者でもある、この研究プロジェクトのリーダー、日本福祉大学教授の近藤克則氏(現・千葉大学教授)からの分析依頼でした。

分析をする前に、すでに私は「歯を失うと、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まる」など、体にさまざまな悪影響が及ぶことは知っていました。しかし、「歯と認知症」の因果関係については、正直なところ半信半疑でした。

しかし、分析結果は歴然で、「歯の状態と認知症」には明らかな因果関係があることがわかったのです。しかも、驚くべき強い関係をもって。私はその調査結果を、アメリカ心身医学会の雑誌「Psychosomatic Medicine」(2012年4月号)に発表しました。

その内容は、「歯(とくに奥歯)がほとんど無い人は、認知症の危険度が増す」というものでした。歯がほとんど無い人は、たいてい奥歯もありません。

奥歯がない人は「認知症リスク1.85倍」

「奥歯が無く、義歯も使用していない人」は、自分の歯が20本以上ある人よりも、年齢、健康状態、生活習慣などの影響を除いても、認知症になるリスクが1.85倍高い。

一方、「奥歯が無くても、義歯を使って奥歯でしっかり噛めている人」は、認知症リスクが1.09倍と、歯がある人とほとんど変わりませんでした。

認知症の方々に奥歯が無かったのは、認知症になって歯の手入れができなくなったからではなく、奥歯が無いために認知症になったと考えられます。

「Psychosomatic Medicine」誌にその調査結果を発表して9か月後の2013年1月、私はこの研究結果を愛知県歯科医師会の研修会で紹介しました。

さぞや歯科医師のみなさんは驚かれるのではと思っていましたが、意に反して、彼らは一様に「やはりそうだったのか」と腑に落ちたような表情を見せたのです。

というのも、大半の歯科医師たちが診療現場で、「奥歯が無くなるとボケが始まり、ボケが進む」「そんな患者さんであっても、義歯を入れると、意識がしっかりしてきて、表情も明るくなる」といった事実に日々、接していたからです。

山本 龍生 神奈川歯科大学大学院歯学研究科教授・歯学博士

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やまもと たつお / Tatsuo Yamamoto

1964年岡山県生まれ。岡山大学歯学部卒業後、同大学歯学部予防歯科学講座助手、米国テキサス大学客員研究員、世界保健機関(WHO)インターン、神奈川歯科大学大学院歯学研究科准教授等を経て、現職。歯・口の健康と認知症やうつなどの全身の健康との関連を研究調査するなど、予防歯科学、口腔衛生学、社会歯科学の第一人者。

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