鉄道とクルマ、似て非なる「電動化」の大義名分

技術面で共通点も、鉄道は"適材適所"で判断

ではなぜハイブリッド車や蓄電池駆動電車が生まれたのか。環境対応、技術革新、乗客サービスの3つの理由があると考えている。

小海線を走るJR東日本の「キハE200形」。世界で初めて営業運転を開始したハイブリッド車両だ(筆者撮影)

もともと鉄道は自動車より、はるかに環境負荷が低い。国土交通省の2018年度のデータでは、ひとり1kmあたりの移動で排出されるCO2の量は、乗用車が133gなのに対し鉄道は18gにすぎない。これはディーゼルカーなども含めた数字だ。

それでも鉄道事業者は、さらに環境に優しい移動を目指し、非電化区間の環境対策を進めている。その過程で登場したのが、発進時や登坂時などにモーターを活用するハイブリッド車、架線がなくてもモーターで走ることができる蓄電池駆動電車だ。

リチウムイオン電池開発が契機

こうした車両を生み出せるようになった最大の理由はやはり、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏などが開発したリチウムイオン電池の登場だろう。

JR東日本「EV-E301系」に搭載したリチウムイオン電池(筆者撮影)
JR東日本が男鹿線で運用している交流用蓄電池駆動電車「EV-E801系」(編集部撮影)

従来の蓄電池に比べて大幅な小型高性能化が可能になったリチウムイオン電池の実用化がなければ、自動車のハイブリッド車や電気自動車の普及は難しかったはずだし、鉄道への採用も考えられなかったに違いない。

鉄道では、ハイブリッド車や蓄電池駆動電車といった用途以外に、停電時にトンネルなどを避け、乗客の避難が容易な場所まで自力走行を可能とするバッテリー自走システムにも、リチウムイオン電池を活用している。

もちろん乗客にとっても、従来の気動車と比べるとハイブリッド車は特に発進が静かで加速が速く、快適だと感じるだろう。ディーゼルエンジンを使わない蓄電池駆動電車に至っては、乗車感覚は電車そのものである。

自動車の電動化も、第一の理由は環境対策である。ただしこちらについては、国家や企業の戦略的な側面もまた大きいと感じている。

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