後悔しない! 相続/事業承継&葬儀・墓
都内に住む吉田浩二さん(仮名)は72歳。高校を卒業後、調理道具の卸会社へ入社した。家が貧乏で大学へ行けなかった吉田さんは、1男1女を大学に進学させるため、47歳で脱サラして独立。今も夫婦で自営を続けている。経営環境は厳しいが、何とか赤字ではない。
息子は会社員となり、42歳の現在は中間管理職で、後を継ぐ気はないらしい。娘が週に何日か吉田さんの仕事を手伝っている程度で、子どもに「後を継がせるのは難しい」(吉田さん)という。吉田さんに万が一のことがあれば、会社を畳む可能性もある。
団塊世代には相続と事業承継が同時に発生
事業承継に悩む中小企業の経営者が増えている。多くは60代の団塊世代だが、その親の世代が現役トップであるケースも少なくない。東京商工会議所で事業承継を支援する中小企業診断士の内藤博氏は「サラリーマンを定年退職した途端、父母の相続と事業承継問題がいっぺんに降りかかってくる例が多い」と語る。
「代々続く家業でも、継がない選択肢もある」との親心で大学へ進学させる。子どもは「いつか家業を継いでくれれば」との親の本音に気づかずに大手企業へ就職していく。「継いだほうがいいのかな」と思うことはあっても、親の事業への理解がないまま、大手企業で一定のポジションに昇格してしまっている。
「父と息子はなかなか本音で語り合えない」(二世経営者を教育する国際後継者フォーラムの二条彪社長)ため、後継者問題が先延ばしで放置されている中小企業が多い。継ぐのが親の死後、自分が60歳を超えてからでは、10~15年で再び事業承継問題が繰り返されることになる。
経営者でなくても、相続は親族間のいさかいの種となりやすい。大半の人は相続税を払う必要がなく、遺言書の用意をする人も少数派。係争になることも少なく、見掛けは「円満」な相続が行われている。