「軽自動車の電動化」で販売店に立ちはだかる壁 安さという魅力が薄れ、販売に影響する懸念も

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――電動車を売っていく中で、販売会社の役割も変わっていくのでしょうか。

われわれとしては電動車の魅力を伝えるだけでなく販売手法を考えなければならない。残価設定ローンやリースなどお客様の負担が一気に増えないような提案をすでにしているがそうした工夫は今後もさらに必要になる。

また電動化に際して、HVやEVでは電動部品を扱う際の電圧への知識など安全面での整備士の研修も必要になる。自動車ディーラーはもちろんだが、地域の整備業者などを通じて販売や整備をする機会が多くあるので、この部分でも同じレベルのサービスを提供するためにきめの細かいフォローアップが今後さらに重要になるだろう。

ほりい・ひとし/1956年生まれ。1978年4月、ダイハツ自動車販売(現ダイハツ工業)入社。国内営業部副部長や取締役専務執行役員(営業本部長)などを経て、2016年5月にダイハツ東京販売、埼玉ダイハツ販売などの会長に。2017年6月に全国軽自動車協会連合会会長に就任(写真:全軽自協)

――軽自動車は電動化が遅れているとの指摘があります。

政府の「グリーン成長戦略」では確かに軽自動車で電動化に向け特段の支援を講じるとあるが、まず軽乗用車の新車販売のうち、3割超はハイブリッド車だ。年々比率が高まっているのを知ってもらいたい。4年前は15%程度だったので倍以上増えている。

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、今後は各メーカーの電動車ラインナップがさらに充実していくと思うが、われわれとしては理解促進と販売促進に力を入れていく。ピンチやチャンスということではなく、販売業界の団体として取り組まなければならない。

軽は国内で重要なモビリティ

――あらためて、軽自動車の存在意義はどこにあると思いますか。

軽自動車の保有は約3000万台で、人口10万人あまりの市区町村で半数近くが保有されている。公共交通機関の利用率が低い地方に行くと、一家に3~5台など世帯あたりの普及台数が多い。逆に地下鉄などの公共交通機関が発達している東京、神奈川、大阪などは軽自動車の保有台数が少ない。こうした状況を見ても軽が地方の足として使われている証左といえる。

また、軽乗用車ユーザーのうち40%が60歳以上で、3分の2が女性ということも特徴だろう。見方が変わるが、日本の道路の85%が幅3.9メートルの狭い道で、小さい軽自動車だからこそスムーズに移動できる実態がある。

安価で使い勝手がいい、小さくて運転しやすいということに加え、最近は安全装備も搭載されていることからも軽自動車は国内で重要なモビリティだと思っている。

東洋経済プラスの連載「自動車産業 電動化の大号砲」では、以下の記事を無料でお読みいただけます。
【軽自動車編】
軽自動車の電動化、立ちはだかる「2つの難題」
EV時代が問う軽自動車の「存在意義」

【燃料電池車(FCV)編】
6年ぶりの刷新、新型「MIRAI」が見せた技術進化
水素インフラ普及を促す「トヨタの秘策」
カギ握る大型トラック、FCV化の最前線

ハイブリッド技術に強い日本勢の難しい立ち位置
横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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