政府が創設する10兆円規模の大学ファンドは、低金利環境での運用が課題だ。研究者支援のために収益性を追い求めれば損失リスクは避けられないが、安定運用に徹し収益率を低く設定し過ぎれば、国力低下を食い止めるための資金調達という本来の目的を果たせなくなる。
米主要大学のファンドは5%以上の収益率
専門家への取材や政治家の発言によれば、大学ファンドが目標とする収益率は3%を下回る可能性がある。3%は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の過去20年の平均収益率と同水準。安定収益確保を主眼とするGPIFは国内外の株式・債券への投資が中心で、不動産や未公開株などに代表されるオルタナティブ(代替)資産の上限は5%にとどまる。
米国主要大学ファンドでは利益を追求して代替資産へ7割を投じる場合もあり、直近でハーバード大学は7.3%、イエールは6.8%、スタンフォードは5.6%の収益率を上げる。ハーバードのファンド規模は419億ドル(4.4兆円)で、規模は半分でも収益額は日本の大学ファンドと同じになる計算だ。
大学ファンド構想を発案した慶応大学の安宅和人教授は、海外から主要7カ国(G7)「引退国」と評された日本の名誉挽回に向け、「足りていないのは金。結局、人を育てる金がない限りは、どれほど素晴らしい計画があっても全ては絵に描いた餅」と述べた。