西浦教授が懸念、ワクチン開始後の「第4波」 中盤戦以降のコロナ禍といかに向き合うか

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これまで人々はコロナ対策に耐えて協力をしてきたが、高齢者などの重症化リスクが抑制されたとき、政府が適切に国民の行動制御をできるのかと心配している。若年層や中年層が「医療リスクは減った」として平時の行動に戻れば、これまでの日本の新規感染者数より1桁多い水準まで感染拡大は進んでいくかもしれない。

ワクチンが行き渡るまでのタイムラグ

西浦博(にしうら・ひろし)/京都大学大学院医学研究科教授。1977年大阪府生まれ。2002年、宮崎医科大学医学部卒業。ユトレヒト大学博士研究員、香港大学助理教授、東京大学准教授、北海道大学教授などを経て、2020年8月から現職。専門は、理論疫学(写真:本人提供)

とくに若者を含む生産年齢人口を相手に、最も肝心なタイミングで首相が「(接触を減らすのを)俺もがんばるから、みんながんばろう」と心からの言葉がかけられない状況は本当に厳しい。ワクチンが全国民に行き渡って集団免疫を達成できる時期は見込めない。その時まで、みんなで行動を制御することに国民の合意が得られるか。その点を今のうちから広く議論しておくべきだと思う。

経済への影響を考えると、行動制限に反対する声は大きくなると思う。しかし、若年・中年層で1桁2桁大きい感染になってしまうと、ワクチンで守れなかった高齢者や喘息患者、それから未接種者の50~60代での重症者の増加によって医療の負荷の拡大がこれまで以上のスピードで起こり、結果として医療資源を圧迫する可能性がある。そういった懸念を考えて、われわれもシミュレーションして準備している。政治はそうしたロードマップを示せるか、今後ワクチン接種が始まる中で重要なトピックだと思う。

――PCR検査の効果に関しては新しい知見はありますか。

検査の是非は段々見えてきた。従来、検査の対象を濃厚接触者などハイリスクの人に限定するのか、接触のない人も含めた全人口まで広げるのかについて議論が戦わされてきた。その中で、有症状者の診断や安心の担保、ビジネス促進などの話はここでは横に置いて、流行抑制のために限定した場合にPCR検査をどう使うべきなのかについては議論が整理されつつある。

神戸大学の國谷紀良准教授(数理科学)の研究にあるように、実効再生産数2.5では2~3日に1回、実効再生産数2では3~4日に1回、感染リスクを持つ同一人物を対象に繰り返し検査を行い、陽性者は宿泊療養などで自己隔離するなど2次感染防止策を取れば、新型コロナの収束に役立つという理論的な根幹を成す考え方は明確になった。

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