スーチー氏拘束、跋扈するアジアの「権威主義」 米バイデン政権の外交政策が試されている

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カンボジアでは2020年4月、非常事態を宣言できる新法が成立した。新型コロナウイルスの抑制が名目だが、対象は感染症対策に限らない。メディア規制や無制限の通信傍受などが可能になった。

カンボジアでは最高裁が2017年、最大野党に解党命令を出し、反政府勢力への締め付けを強めてきた。新法はフン・セン首相の独裁体制を完成させる意味があるとされている。

ASEAN加盟10カ国の中で、バイデン政権の誕生をもろ手を挙げて喜んだ首脳はおそらく1人もいない。過去4年の間に米中対立は激化し、各国は米中との間合いの取り方に腐心してきた。一方、人権や民主化に対するトランプ氏の無関心は、国内で強権をふるう上では都合が良かった。

今後のキーワードは「人権」と「南シナ海」

このように権威主義色を強める東南アジア諸国とバイデン政権の今後を占うキーワードは人権、そして米中対立の最前線となる南シナ海になるだろう。

バイデン氏が副大統領職にあったオバマ政権は、アメリカ自身を「太平洋国家」と規定し、中東からアジアへ外交の重点を移すリバランス政策をうたった。オバマ氏は、野党を弾圧したフンセン政権の人権侵害やタイのクーデターを激しく批判し、悪態をつくドゥテルテ大統領との会見をキャンセルした。他方、民政復帰したミャンマーを訪れてスーチー氏をハグし、経済制裁を解除した。

こうした民主化・人権外交をどこまで推し進めるのか。今回のミャンマーのクーデターへの対応はその試金石となる。周辺国はアメリカの出方を注視している。アメリカが強く出れば、権威主義国家は「内政不干渉」を支持する中国寄りとなる。

欧米の経済的制裁は昔ほど効果がなくなっている。それは、アメリカの経済力が相対的に低下し、中国という受け皿がより大きくなっているためだ。

外務省によると、タイに依存する隣国のラオス、日本に石油・天然ガスを輸出するブルネイを除けば、ASEAN8カ国の貿易相手のトップは中国である(2020年)。中国にとっても対ASEAN貿易額はEUやアメリカを上回り、初めて首位にたった(出所は中国税関総署、2020年上半期)。ASEANと中国の間の経済的な依存関係は深まる一方、貿易摩擦の影響で対米貿易額は大きく減少している。

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