スーチー氏拘束、跋扈するアジアの「権威主義」

米バイデン政権の外交政策が試されている

両国以外にも東南アジアでは強権的な政権運営が目立っている。

タイでは1月19日、王室を批判する音声をネットに投稿した元国家公務員の女性に対し、刑事裁判所が不敬罪で禁錮43年余の実刑を言い渡した。不敬罪の刑期としては史上最長である。タイの裁判所が時の政権と一体化していることを思えば、2020年から続く反政府デモに対する警告とみるのが自然だ。若者を中心としたデモ隊の要求は、プラユット首相の退陣のほか、王制改革や不敬罪の廃止にも踏み込んでいる。

不敬罪は過去、時々の政権が政敵の弾圧に恣意的に用いてきた。2006年の軍事クーデター以来、軍主導の政権が乱用してきたが、2018年以降、手控えられていた。それはワチラロンコン国王の意向との説明だったが、王制改革を掲げる反政府デモが盛り上がった2020年11月、参加者40人余りに出頭を求め、一部の逮捕に踏み切っていた。

戒厳令布告をちらつかせるドゥテルテ氏

プラユット首相は、陸軍司令官だった2014年にクーデターを主導し、権力を握った。アメリカのオバマ政権は当時厳しく批判し、多国間軍事演習へのアメリカ側の参加人数を減らしたり、軍事支援を削減したりした。トランプ政権になると一転してタイとの関係を修復し、クーデターや野党への締め付けを問題にしなくなっていた。

2019年3月には8年ぶりの総選挙を実施し、プラユット氏は議会工作でかろうじて首相の座を維持した。ところが、新党ながら第3党に躍進した新未来党に対して憲法裁判所が2020年2月に解散命令を発出。党首の政治活動を10年間禁止したことに若者らが激しく反発し、街頭デモが繰り返されていた。

フィリピンでは軍が1月、国立フィリピン大学との間に結ばれた構内立ち入り禁止協定を一方的に破棄することが起きている。この協定はマルコス独裁政権が1970年代に布告した戒厳令下、民主化を求める多くの学生が軍によって拷問、惨殺された歴史の教訓から生まれたものだった。

政府に批判的な放送局を閉鎖に追い込み、ネットニュースの創設者を訴追するなど、ドゥテルテ大統領はメディア統制を進めている。マルコス元大統領を「歴代最高の指導者」と讃え、歴代政権が認めなかった遺体の英雄墓地への埋葬を認めた。ことあるごとに戒厳令布告の可能性に言及している。

ドゥテルテ氏にとって最重要の政策である麻薬撲滅戦争をめぐっては、司法手続きを経ずに多数の国民が殺害されている事態を厳しく批判したアメリカのオバマ大統領(当時)を「売春婦の息子」などと罵り、毛嫌いしていた。ところが、トランプ氏との関係は平穏だった。暴言仲間ということに加え、トランプ氏が麻薬戦争を「素晴らしい仕事」と持ち上げたからだ。

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