なぜ『フォーブス ジャパン』を創刊するのか 元外資金融マンの編集長の挑戦
「雑誌」だけで終わるつもりはない
――どこに可能性を感じたのですか。
現在、アメリカでは、ドラスチックにメディアが変革しています。その一方で日本のメディアはまだです。日本ではよく知られている不動産からの収益や再販制度、買い取り制度などに守られた、既存の強靭な収益基盤があり、変革への必然性をあまり感じていないからかもしれません。とはいえ、これから日本のメディアは、デジタル時代の中、間違いなく大きな変革期を迎えると思います。だからこそ、重い腰のメディア企業を横目に、新しく参入する“機会”が存在する。
また、最近のメディアの動きを見ると、スマートニュースやニューズピックスといった、ある種のキュレーターの役割を果たすメディアが出てきています。もちろんこれはこれからのメディアのカタチのひとつであり、いいサービスだと思う一方で、私は「ウェブだけでは良いブランドがなかなかつくれない」と思うのです。たとえば、スマートニュースとグノシーは、よく似ている印象で、将来的にはどちらかが勝つか、あるいは同一化していくしかない。たが、そこに、強力なブランドがあれば、違う。
――具体的に言うと。
現在、ウェブの世界でブランドを生かしてグローバルに成功しているのは、フィナンシャルタイムズやフォーブスなどごく一部のメディアだけです。これらに共通するのは、プリント媒体で強靭なブランドをつくっている点です。だから、私たちアトミックスメディア社は、メディアビジネス構築の最初のステップとして『フォーブス ジャパン』を創刊しました。われわれに雑誌の出版社という意識はありません。
私たちはまず雑誌『フォーブス ジャパン』で、情報に価値を見いだしている“知識層”から評価され、「フォーブスならばオカネを払おう」という人を増やしてから、第二ステップとしてウェブ化を考えています。
現在のようなメディアの変革期に重要なのは、ウェブ化するときにいかにブランドをつくっていくか――。ビジネスプランがあり、ブランドがあれば、強い経営ができる。だから私自身は、雑誌の世界に入ったという感覚はありませんね。