ドコモ、競合3社の新料金プランで薄れる「新味」 料金は2980円で横並び、次なる差別化のカギは

拡大
縮小

ドコモに続き、ソフトバンクとKDDIも対抗策を打ち出している。2020年12月22日にはソフトバンクが傘下のLINEモバイルを吸収する形で、ドコモと同じく20GBで月額2980円の新プラン「SoftBank on LINE」を発表。コミュニケーションアプリ「LINE」の通信は利用データ量に含めないという「売り」を強調した。

年が明け1月13日にはKDDIも新プラン「povo(ポボ)」を発表した。こちらはドコモとソフトバンクがつけている「1回5分以内の通話は無料」をオプション(月額500円)にすることで、20GBで月額2480円という料金にした。

今後の焦点は事業者間でユーザーの乗り換えが進むのかどうかだ。アハモは1月11時点で事前の予約者数が55万人に達した。ドコモは2020年7~9月の契約が20.9万件の純減だったので、一見するとアハモの引き合いは上々ともいえる。

【2020年2月10日17時45分追記】初出時、ドコモの2020年7~9月の純減数が誤っていました。お詫びして訂正いたします。

だが、ドコモはこの予約者数の内訳(既存プランのユーザーと他社ユーザーの比率)を開示していない。井伊社長はアハモの発表時に「(他社に奪われた)若い世代を取り戻さないといけない」と語っていたが、狙い通りいったのかはまだ不明だ。仮にアハモに切り替えたドコモユーザーの割合が多ければ、顧客単価の下げ圧力が強まるだけだ。

抜本的な打開策が必要

ドコモ、KDDI、ソフトバンクの各社は20GBの中容量帯だけでなく、大容量帯も1000円前後値下げした。つまり楽天以外の料金プランはほぼ横並びだ。値下げ競争が一巡した後は、サービス面での差別化が重要になる。

先述の通りソフトバンクの新プランではLINEの利用はビデオ通話などを含めて無制限だ。KDDIのポボには「24時間データ使い放題を200円で買う」といった、さまざまな有料オプションがある。後発の楽天はもともとネット通販の「楽天市場」など広範なサービス群を持ち、多くのポイントが貯まることを訴求する。実際、楽天モバイルのユーザーのうち55%が楽天市場を利用しており、「モバイルが“楽天経済圏”で非常に重要になる」(三木谷氏)。

一方のドコモは、2980円という料金発表時の衝撃は大きかったものの、結果的にアハモのプランには目立った特徴がなく、他社の対抗プランが出そろった中では「新味」が薄れた。井伊社長は昨年12月の東洋経済のインタビューでサービス戦略について、「今までのドコモだったらやらなかったことを思い切ってやる」と話していたが、顧客獲得を推し進めるうえでサービス面での打開策が早急に求められそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT