NTT東日本、電話の逆風を跳ね返す5Gの「鉱脈」 既存事業が頭打ちでも営業利益は右肩上がり

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NTT東日本の井上社長は「よく節約して利益を出せていると思う」と述べた(撮影:尾形文繁)
NTTドコモが携帯電話回線の拡大で成長したのとは対照的に、固定電話離れで売上高が減り続けたのがNTT東日本とNTT西日本だ。2001年に始まった「フレッツ光」に代表される光回線の販売も20年が経った今、もはや頭打ちだ。
一方でNTTグループの国内事業の売上高では東西が約4割を占めるなど、決して小さくない存在だ。既存事業での成長が見込めない中、東西両社はさまざまな新規事業に取り組む。飽和市場で反転攻勢をかけられるのか。NTT東日本の井上福造社長に話を聞いた。


――グループ全体で海外市場での成長戦略を描く中、NTT東日本の事業領域は国内中心で、電話や光回線ビジネスは頭打ちです。

国内事業の下支えがないと、海外では戦えない。売上高は減っているが、システム化を進めて退職者の人数分を補充せずにやってきた。よく節約して利益を出せていると思う。NTT東日本はNTT(グループ)の「長男」ですからね。(電話回線や光回線という)親の遺産をちゃんと大事に守って事業をやっている。

固定回線の音声(電話)収入が減るのは目に見えていたので、それを光回線の収入でカバーしてきたのがこの20年ほどだ。他社に光回線を売ってもらう(「ドコモ光」「auひかり」などの)光コラボモデルを広げ、販売コストを圧縮しつつ、携帯会社のセット割引で伸びてきた。

ただそれも飽和している。固定のブロードバンドは(モバイル回線とは異なり)データ量に比例して儲かるものではなく、完全に定額制になっている。収入は契約数でしか増えない。むしろ通信量が増えれば設備を増強する必要があり、コスト増になる。大きなジレンマだ。

「ローカル5G」にブルーオーシャン

――2020年度は3期ぶりに増収に転じる見込みです。

2020年度の増収は連結対象が1社増えたことが大きい。法人向けにWi-Fi環境の構築を手掛けるNTTブロードバンドプラットフォームという会社で、これは単に売上高を増やそうとしたのではなく、IoTの流れに備えて無線のソリューションを提供する能力が必要だったからだ。Wi-Fiだけでなく、「ローカル5G」も含めて手掛けていく。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、通信環境は不可欠な部品になる。固定も無線も必要だ。IoTを実現するには、お客さんの施設や敷地内に無線ネットワークを作る。これまではWi-FiやLPWA(低消費電力の長距離高速通信規格)を手がけていたが、ローカル5Gでは免許が与えられる専用の周波数帯がある。ここはブルーオーシャンだ。

東洋経済プラスの連載「反撃のNTT」で、この記事の続きを無料でお読みいただけます。同連載ではNTTグループ6社のトップインタビューも配信しています。
NTT社長「“ゲームチェンジ”すればGAFAは脅威じゃない」
NTTドコモ社長「ギリギリ準備が整った。早急にV字回復させる」
NTTコミュニケーションズ社長「ドコモと組んで“プラットフォーマー”になる」
NTTデータ社長「もっと上へ“世界トップ5”目指す」
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中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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