コロナで激変、「60歳退職」目指す人の落とし穴 年金と退職金を早めにもらっても後は続く?

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iDeCoは2022年の改正により65歳まで加入できるようになります。自営業の方は任意加入をするなど条件がつきますが、会社員を続けていればAさんも継続加入が可能です。プラス5年加入が延びれば月2万3000円の掛け金元本だけでも138万円も積み立てられます。もちろん掛け金は全額所得控除ですから、給与から引かれる税金も節税できます。

もし会社の退職金を60歳で受け取り、iDeCoを65歳で一括受け取りをすると、税金はどうなるでしょうか。600万円の退職金からは勤続10年分に相当する400万円の退職所得控除が差し引かれます。課税対象は200万円の2分の1、つまり所得税は5万円、住民税は10万円です。

65歳までiDeCoの加入を続けると、通算加入年数は22年となります。しかしiDeCoの受け取り前15年間で別の退職金を受け取っていると、そこで使った退職所得控除の対象期間は使用済みとなるため、使える通算期間は12年、つまり退職所得控除は480万円です。仮に65歳時点のiDeCoの残高が650万円になっていたとすれば税金は12万7500円です。

iDeCoは分割受け取りも可能ですから、公的年金を繰り下げてiDeCoを代わりに受け取れば公的年金等控除が使えるので、さらに税金を圧縮することも可能です。繰り下げをすると繰り上げとは逆に年金額も増額されます。

60歳時点の「お金」と「気持ち」を見極めよう

もちろん、これらのメリットは、会社員を65歳まで続けたらという仮定のもとでの話です。経済的にメリットがあるからといっても気持ちがなければ続けられません。

Aさんは、「お金のために働くというのも、正直モチベーションにはなりませんが、やっぱりお金は大事ですよね。正直60歳でリタイアすることについては、お金の面でとても不安でした。働き続けるというオプションもキープしながらもう少し頑張ってみようという気になりました」と笑顔を見せてくださいました。

ゴールを決めて邁進するのもすばらしいことですが、気持ちに迷いが生じるのも自然なことです。何しろ、人生は私たちが思っている以上に長い可能性があります。ときには少し力を抜きつつ、呼吸を整えながら進むのも十分すてきなことだと思います。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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