コロナで激変、「60歳退職」目指す人の落とし穴 年金と退職金を早めにもらっても後は続く?

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「定年になったら働かず、のんびりと暮らしたい」。そう考えている人は多い。だが、本当に幸せになれる?まずは「老後の家計」を診断してみよう(写真:Fast &Slow/PIXTA)

コロナ禍の生活が長くなるにつれ、ライフプランの変更が頭をよぎるという方も少なくありません。先日、筆者のもとにご相談にいらっしゃった58歳の男性もそうでした。

仮にAさんとしましょう。そろそろ定年という年齢ですが、勤め先には再雇用制度があり、65歳までは現在の仕事を続けることができる環境です。Aさんも当然のように「働けるだけ働こう」という気持ちでしたが、「最近、働こうという気持ちがぷつんと切れた気がする」とおっしゃるのです。

Aさんの勤め先もテレワークを導入し、通勤からの解放に最初は喜んだものの、徐々に違和感が大きくなったそうです。同僚とのコミュニケーション、仕事のやり方、社内の評価基準など、さまざまな変化があり、これまでのような達成感や高揚感、会社組織としての一体感などを感じることができなくなったのだそうです。

「退職金があるし、年金も繰り上げて早々に隠居生活に入りたいが、家計は大丈夫なのか?」

Aさんのご相談にどうお答えしたのか、お話ししましょう。

年金を60歳から繰り上げ受給するデメリット

まず、Aさんのねんきん定期便を見ながら、60歳から年金生活をした場合のキャッシュフローについてご説明しました。Aさんは、なるほどとうなずきながらも、思っていた以上に厳しい家計状況に渋い顔をされます。

そして、定年後は会社員の生活とどう違うのかをご説明しました。例えば、Aさんの奥様は3歳年下でずっと専業主婦ですが、Aさんが定年になると奥様は扶養の3号被保険者から外れ、国民年金に加入しなければなりません。今までは保険料免除でしたが、1号被保険者となると月1万7000円程度の保険料負担が発生します。もちろんこの保険料を払ったからといって、奥様の老齢年金が増えるわけではありません。

Aさん自身は、定年になったらすぐに年金を受け取りたいと考えています。1963(昭和38)年生まれですから65歳より前に受け取れる特別支給の老齢厚生年金はなく、国民年金も厚生年金も65歳から支給開始です。しかし、これを60歳から受け取りたいというのです。

年金受け取りの開始時期を早めることを繰り上げといい、本来支給される年金額よりも少ない額を一生受取ります。現行繰り上げ(注:日本年金機構では「繰上げ」「繰下げ」と表記)は1カ月当たり0.5%ずつ減額されるのですが、2022年の法律改正により0.4%ずつの減額と変わります。例えば5年受給を早めると年金が30%減額されていたものが、24%の減額率で済むようになるのです。年金は終身受け取りですから、減額率が小さくなるのは朗報です。

ただ、万が一のときに障害年金が受け取れなくなります。この点は見落としがちなポイントです。障害年金はそもそも65歳未満が対象なのですが、繰り上げをすると、「老齢年金受給者」となるため、障害年金が受けられなくなるのです。仮に障害1級となると、65歳から受給する老齢年金より多い金額を受給できます。

また会社員であれば、年下の配偶者に対しての加算がありますが、これは65歳にならないと受けられません。

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