ついに株価の短期下落が始まったかもしれない 「波乱の真犯人」は本当にロビンフッダーなのか

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しかし同社の株価は、同日の時間外取引以降、下落した。これを受けて、「決算期待で買われたものが、事実を受けて売られている」との解説も多い。これが世間で言われている、2つ目の株価下落のきっかけだろう。

確かに「期待で買われたものが事実で売られる」というのは、よくある事象なので、そうしたきっかけについての解説は、完全には否定できない。しかし振り返ると株価上昇時に「決算期待だ」と言われていた割には、どの産業、あるいはどの企業の決算が、どのように期待されていたのかについて、きちんと述べたものは、筆者は目にしていない。

おそらく、株価が勢いだけで理由もなく上がっていたが、そのタイミングがたまたま10~12月期の決算発表時期の前だったため、やはり後付けで「決算期待」という理由がこじつけられたのではないだろうか。真実は、理由もなく勢いだけで上がっていた主要国の株価が、勢いが尽きて反落に転じただけ、だと推察する。

調整はこれまでの「裏返し」

つまり、先週の株価下落の背景には、実体経済や企業収益について、深刻な悪いことが起こったわけではない。勢いだけで、はしゃいで株価が上振れし過ぎたので、それが単に下振れし始めただけだ。

したがって、深刻な株価下落がこれからやってくるわけでも、バブル崩壊でもない。前回のコラムで述べた通り、短期的(むこう1~2カ月程度)には、主な株価指数は1割程度下落すると考える。日経平均株価なら2万5000円割れ、ニューヨークダウなら2万7000ドル程度のイメージだ。1割前後の下落であれば、株式市況では日常茶飯事だ。

このように、筆者の見通しはずっと変わっていないのだが、今年初にさまざまなマスコミに出演させていただいて、日経平均株価が2万5000円割れなどと語ると、テレビのキャスターの方々の反応は「どひゃ~」「ぐえ~」というようなものだった(もちろん番組本番ではなく事前の打ち合わせ時のことだ)。

昨年11月初めには、日経平均株価は2万3000円台だったのであり、こうした予想は「そこまで下げることもない」といった極めて穏やかなものだ。それでも驚きをもって迎えられたのは、足元の株価上昇で目線が上がってしまい、多くの方が「いつ日経平均は3万円を超えるのか」ということばかりに気がとられてしまったので、たった1割強の下落見通しでも筆者が大暴落を唱えているかのように感じられてしまったからだろう。

投資家も、もし1割強の株価下落で立ち直れないほどの損失を被ってしまうようであれば、それは下落する株価が悪いわけではない。むしろ日常茶飯事に生じる程度の株価変動で大きな損が発生してしまう投資のやり方が、悪いのだと言えよう。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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