さて、そのバイデン新大統領である。就任演説では”Unity”(統合)を何度も繰り返したけれども、分断が進んだ今のアメリカ社会をどこまで修復できるかは、心もとないところである。議会も上院が50対50、下院が222対212というかつてないくらいの僅差となっている。議会で承認済みの閣僚もまだ一部で、とりあえずは1.9兆ドルの追加経済対策を早期に成立させられるかどうかが注目点となる。
トランプ前大統領の威光は健在だった
ところが問題は、2月9日からトランプ前大統領の弾劾裁判が始まってしまうことだ。それが始まった瞬間に、上院における他のあらゆる審議は止まってしまう。しかも弾劾裁判とは一種の「模擬裁判」なので、冒頭陳述やら弁護側反論やら証人喚問などがあり、一定の時間がかかる。昨年行われた弾劾裁判も、結審まで2週間以上かかっている。
つまりバイデン大統領にとっては、成果を問われる「最初の100日間」のうち貴重な数週間が浪費され、なおかつ国民の「分断」を再加速してしまいかねない。さらに2月9日までの短い時間で、追加経済対策を通すのも至難の業と言えよう。あるいは共和党側が足元を見て、予算を「値切って」くるかもしれない。それが1.5兆ドル程度にとどまれば想定の範囲内、1兆ドルまで減らされたら民主党の負け、株価に与える影響もマイナス、というのがだいたいの相場観ではないかと思う。
ちなみに弾劾裁判の行方だが、上院議員100人が陪審員となり、3分の2以上の賛成(67人)が必要になる。1年前の弾劾裁判は「権力乱用」と「議会妨害」が罪状で、共和党議員53人中賛同したのは1人だけだった。今回は「反乱を扇動した罪」である。1月6日の議会乱入事件では、多くの議員たちが命の危険を感じており、賛同者は前回よりも増えそうだ。
とはいえ、1月26日に共和党のランド・ポール上院議員が提出した「退任後の大統領に対する弾劾裁判は違憲である」という動議は、上院では45対55で否決されている。つまり民主党議員は50人全員が反対(=民間人になっても弾劾裁判にかけられる)だったが、共和党から反対した議員は5人だけ。これではさすがに弾劾成立は望み薄なので、「問責決議」でお茶を濁そう、という動きも出始めている。共和党議員たちの間で、トランプ前大統領の「威光」はまだまだ健在のようだ。
バイデン大統領としては、「悪い子大統領」のことは今さら罰するよりも皆で忘れるのがいちばん、それより私に仕事させてくださいよ! と言いたいところであろう。目立たない「普通の子」大統領に、チャンスが回ってくることを切に祈りたい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら