「レンブラントは誰の手に」に見る絵画の魔力 人間模様が錯綜するドキュメンタリー映画
そんなホーヘンダイク監督の新作となる『レンブラントは誰の手に』でも、レンブラントに魅せられた人々の「こんなはずじゃなかった――」という瞬間を淡々と、かつ皮肉たっぷりに切り取っている。
本作にはレンブラントの絵に魅せられた人物が次々と登場するが、その中心人物となるのは、野心に燃えるオランダの若き画商であり、美術研究科であるヤン・シックス11世。
ホーヘンダイク監督は、彼が家族の歴史や父親からのプレッシャーから逃れようと奮闘していることを知り、「映画監督として、彼はすばらしい主人公になりうる。自分だけが持っている価値を証明しようとする情熱、あるいは欲求ともいうべき熱意は、まるでシェイクスピアの戯曲の中に登場する主人公のようだ」と感じたという。
レンブラントの友人であり、パトロンでもあったオランダ貴族ヤン・シックスの家系に生まれた彼は、幼い頃からレンブラントが描いた貴重な肖像画『ヤン・シックスの肖像』をはじめとした多くの絵画に囲まれた環境の中で育ち、美術の審美眼を養っていった。ちなみに『ヤン・シックスの肖像』は、レンブラントの晩年期に描かれた肖像画で、大胆な筆遣いが印象的な、17世紀オランダ絵画の傑作の1つとも言われている。
投機対象となったアートの実情を描写
近年はアートが富裕層の投機対象となり、著名な作家の作品ならば数十億円、数百億円という単位の金銭が飛び交うようになって久しい。そんな中、ヤン・シックス11世が、ロンドンの競売会社クリスティーズで作者不明の絵画『若い紳士の肖像画』を落札したのはおよそ11万ポンド(約1600万円)だった。
クリスティーズは過小評価をしているが、彼はこの絵がレンブラントの作品ではないかと見ていた。そして、彼は見事、この絵画を落札することに成功する。「これはレンブラントが描いた本物に違いない」という自身の直感を証明するために、落札後もさらに絵画の検証を続ける。
シックス・コレクション理事長を務める父のヤン・シックス10世は、レンブラントの絵画に対して「こうかもしれない」「こうだったら」と夢とロマンをはせるタイプのようだが、息子のヤン・シックス11世は「しっかりとした証拠がなくては」という現実派タイプ。
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