魂の事業計画とはどうあるべきか 「手触り感」に尽きるということ

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「手触り感」とは何か

ここまで売り上げの定義や分解の仕方を中心に考えてきました。ここから売り上げの中身を具体的に作り込んでいきます。換言すると将来の売り上げの予測です。ここで多くの場合使われるのが、過去の成長率をそのまま引っ張るというアプローチです。

それは確かに大原則ではありますが、その前提は、昨日と同じ日が明日もやってくるということでもあります。成長率を機械的に引くのであれば、まずその前提が正しいかを自らに問い詰めたうえであるべきです。

それでもなお事業環境が今後も変わらない前提であれば、トレンドをそのまま引っ張ります。ただ新製品・新規参入といった事業環境が変わりそうな片鱗が見えるのであれば、その要素を織り込んで「一定の掛け目」を入れることが必要です。また事業環境が変わらない場合でも、売り上げが伸びきっている感じや下げ止まる感じがあれば、単純に成長率を引っ張るのではなく、ここでも「一定の掛け目」を入れます。

さてここで出てきた「一定の掛け目」とはなんでしょうか。

身もふたもない言い方ですが、これははっきり言って動物的勘というか経験に基づく数字感です。結局、将来のことなんて誰もわからないので、エイヤで書ききります。でも、その「一定の掛け目」のエイヤ感はどこから来るのか。勘と言うと思考停止になるのでもう一歩踏み込むと、そのヒントは「手触り感」にあると思います。

「手触り感」。もう少し具体的に考えてみます。

たとえば、ある商店街の定食屋の年商が3650万円だとします。ピンとくるでしょうか? おそらくピンとこないと思います。

ではたとえば1日当たり10万円といわれればどうでしょうか。イメージが少しは湧きます。単価が1000円で1日100食売っているといわれればもっとイメージが湧きます。このペースは1日10時間営業しているのなら、1時間に10食。席数が5席で30分で1回転とすると、1時間で2回転するくらいのペースです。

そう考えていくと、オペレーションも含めた具体的なイメージがどんどん湧いてきます。年商3650万の店が10%売り上げを伸ばすことの妥当性はピンときませんが、それは言い換えると1時間当たり1食増やすということです。だとすると今の席数とか店主の顔とか浮かんできて、はたして現実的なのかと考えが浮かびます。

しょせんは数字しか見てないのですが、これこそが「手触り感」です。

そうすると、計画づくりで過去トレンドを引っ張ってそのまま伸びたらどうなるか? あるいはそのまま落ち続けるものなのか? そこに入れる掛け目はどの程度なのか?――という肌感覚がなんとなく見えてきます。

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