ファナックが驚異の速さで「脱コロナ不況」の訳 ロボット受注は過去最高、20%近い増益見込む

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山口社長もこれまでの設備投資について、「製品の供給量に問題がないように、先を見て工場を増設してきた。減産局面では生産能力をもっていることが重荷になってしまうが、足元のような回復局面ではある程度の生産能力がないと注文をさばけない」と胸を張る。

山口社長は「ロボットの台数がEV化によって減るとは考えていない」と話す。写真は2020年2月4日のインタビュー時のもの(編集部撮影)

「今後は次の増産のタイミングにむけて工場内の設備を増やしていくことになるが、従来以上に安くてコンパクトな設備を入れていこうと社内で発破をかけている。増産した際に利益が出やすい構造にしたい」(山口社長)と、さらなる利益率向上も狙う。

交錯する懸念とEVへの期待

ただ、来年度以降の受注動向には不安も残る。足元の受注急増に貢献しているIT関連向けのロボドリルの需要は増減の波が大きい。山口社長は、「(第3四半期の受注には、)中国では春節を見越した先の納期の受注も入っている。第3四半期と同じ受注水準が第4四半期も続くという楽観的な想定はしていない」と慎重姿勢だ。

今後のカギを握るのは、自動車業界のEVシフトによる設備投資需要の刈り取りだ。

ファナックが誇る「黄色いロボット」。再浮上のカギを握っている(撮影:梅谷秀司)

世界的なEV、HV(ハイブリッド車)化の流れにより、自動車業界で新規の設備投資が増加することが期待される。山口社長は、「自動車のEV化によってロボットを使う要素が増える可能性がある。例えば、『バッテリーの組み立てにロボットを使いたい』という声もいろいろな国(のメーカー)からいただいており、そういったところを重点領域として用途開発に取り組んでいる」と意欲を見せる。

ファナックは長らく続いた停滞期から抜け出しつつある。高収益企業としての復活は、EVをはじめ新たな需要に応えられるか否かにかかっている。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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