――「SASUKE」と言えば、「ミスターサスケ」の異名をとる山田勝己さんを筆頭に、ユニークなキャラクターや、彼らにまつわる人間ドラマも魅力のひとつですね。
人間ドラマは「SASUKE」の必須要素のひとつですね。それがないとただのフィールドアスレチックになるかもしれません。実は当初から「SASUKE」のテーマとして、「名もなきアスリートたちのオリンピック」を掲げています。
発端は4回目に登場した秋山和彦さんという、元毛ガニ漁師さんでした。彼が挑戦するにいたった流れがとてもドラマチックだったのです。彼はもともと、自衛隊員として、レスリングの五輪選手を目指していましたが、先天的な目の病気が悪化。その後、家業のカニ漁師として働きますが、目の障害のため、船舶免許の取得もできず、家業を継ぐことはあきらめざるをえなくなってしまったのです。彼と会った当時は、札幌の盲学校で鍼灸師の勉強中でした。
「SASUKE」にも毎回挑戦してきましたが、日没後の収録で薄暗くなると、彼にはエリアがほとんど見えなくなってしまう。当然、リタイアの連続。僕が、もうやめたらどうかと言うと、彼は「ハンディキャップがあることを言い訳にしたくないからやめません」と。「これはある種、人間の生きざまだ!」と思いました。
「SASUKE」に人生をささげた男、知っていますか?
山田勝己さんだって、そうです。「SASUKE」にのめりこみすぎて、自宅にセットを製作。スパイダーウォークと言うエリアに始まり、クリフハンガーやそり立つ壁まで。結果、彼は仕事も辞めて「SASUKE」一筋という人生に。これが人間ドラマにならないわけがない。
でもよく考えたらオリンピックも同じでしょ? 選手たちがいかにして五輪の舞台に立ったのか、その背景や、道程を知ったうえで彼らの演技や競技を見ると、より輝いて見えます。それと同じだと思うのです。
――テーマが「名もなきアスリートのオリンピック」ですものね。
ええ。でも人間ドキュメンタリーを作ろうと思うと、年に2回の収録で、全国から選手たちを呼んで、収録してはい終わり、というわけにはいきません。頻繁に彼らと連絡を取り合い、情報交換をしなければなりません。
それだけではありません。たとえば、結婚、出産時にはお祝いを個人的にしますし、奥さんやお子さんが「SASUKE」出場に対して不満を持っていれば、直接お会いしたり、電話してご相談させていただくこともあります。
――奥さんに電話まで(笑)! なぜ挑戦者たちをそこまで引き付けるのでしょうか?
私も正直「たかがテレビ番組なのに、なぜこんなにのめり込んでるんだよ……」と思うことはあります(笑)。
時に「SASUKE」には五輪メダリストも出場します。ですが、結果を残す多くの選手は「SASUKE」にすべてを捧げてきたヤツらばかり。つまり、「SASUKE」というフィールドとは、五輪メダリストやトップアスリートではなく、毛ガニ漁師やガソリンスタンドの店員、「SASUKE」のために仕事を捨てた、そんな「一般」の男たちが「輝ける」場所として存在します。これが彼らのモチベーションの理由かもしれませんね。
とにかく、コンセプトはシンプルでいい。さまざまな肩書きを持った100人の出場者が跳ぶ、泳ぐ、ぶら下がる――難関をクリアしていくだけですから。成功すれば誰しもが「すげえ!」って思いますしね。
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