ジャニーズ「辞める人」続出が示す時代の変化 辞めるも止まるも「自己プロデュース」力が肝心

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「新しい仕事の形」という意味では、香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎による「新しい地図」も思い浮かぶ。2016年末のSMAP解散後2017年に退所したときの彼らも、全員40代になっていた。同年3人での「新しい地図」としての活動をスタートさせ、ネットテレビやYouTube、SNSなどインターネットを主な拠点に音楽や映画など多方面で活動を展開している。固定されたグループというよりも自立した個人の集合体的な仕事のスタイルが、新鮮だ。

「株式会社TOKIO」と中居正広が拓いた世界

こうしたなか、ジャニーズ事務所とその周辺にも少しずつ変化の兆しを感じさせる部分が出てきた。

まずTOKIOによる「株式会社TOKIO」の設立がある。先述の長瀬智也の退所発表の際、同時に発表されていたのが残る3人による「株式会社TOKIO」の設立だった。同社はジャニーズ事務所の関連会社で、城島茂が社長、国分太一と松岡昌宏が副社長として経営に携わる。

つまり、ジャニーズ事務所に所属しながら「今まで以上に自由度高く、新しい仕事に積極的に挑んで」(「弊社所属アーティスト「TOKIO」に関するご報告」より)いくための土台になるのが、この「株式会社TOKIO」だ。こちらも長瀬智也と同様、まだ始まってみないとわからない面はあるが、“事務所内独立”のかたちが認められたジャニーズ事務所史上初のケースになる。

また中居正広のケースも、時代の変化を実感させるものだ。

SMAP解散後ジャニーズ事務所にとどまっていた中居正広は、昨年2020年3月いっぱいをもって47歳で退所。その後個人事務所である「のんびりなかい」を設立し、主にテレビのMCとしての仕事を続けている。

これまで、元ジャニーズ事務所所属のタレントがメインの番組で現役ジャニーズのタレントと共演するという光景はあまり見た記憶がない。だが中居正広がMCを務める番組には、彼が退所後も現役ジャニーズが当然のごとく出演している。『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)では東山紀之がゲスト出演して中居正広の退所のことを自ら話題に持ち出し、『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBSテレビ系)にはSnow Manが登場してたっぷり絡んだこともあった。

今後こうしたジャニーズと元ジャニーズの共演がすぐに一般的なものになっていくかはわからない。しかし、ジャニーズに限らず芸能人が所属事務所を辞めることにはとかくネガティブなイメージがつきまとうなかで、そのあたりをまったく感じさせないだけでも中居正広が果たした役割は大きい。その点、ユーモアを交えつつどんな質問にもオープンに答えた単独での退所会見も見事だった。

この「株式会社TOKIO」と中居正広のケースから見えてくるのは、ジャニーズにおける「自己プロデュース」時代の到来だ。仕事の選択やイメージの維持を他人任せにするのではなく、自分自身で担っていく姿勢が求められ始めている。それは、多かれ少なかれここまでふれてきたほかのケースにもいえることだ。

こうした時代の流れの中で、今月発表になった「ジャニーズJr.の22歳定年制」の導入も決まったものとみられる。Jr.たちはこれまでより短い期間で結果を残す必要が出てきたが、ここでも必要となるのが「自己プロデュース」力だ。

そして、事務所にとどまるにせよ独立するにせよ、そうした「自己プロデュース」の重要性はさらに高まるだろう。もし自分の応援するジャニーズのタレントが退所するとなれば、複雑な思いを抱くファンは当然多いに違いない。だが、大きな時代の流れはそういう方向に向かっているように思える。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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