ジャニーズ「辞める人」続出が示す時代の変化

辞めるも止まるも「自己プロデュース」力が肝心

また、海外で本格的に活動したいという退所理由も共通項としてある。渋谷すばるにもそうした意向があったが、ごく最近のケースとしては昨年退所した山下智久が思い出される。山下は、海外からの映画出演のオファーがあったのを機に、2020年に退所した。元々少年時代から海外への強い憧れを抱いていた彼は、自主的に英語を勉強するなど準備を進めていた。またNetflix配信の日欧共同制作ドラマに出演するなど、すでに実績もあった。

ネット時代になり、YouTubeやSNSを通じて海外ファンを獲得しやすい環境も整っている。赤西仁や山下智久などは、中国のSNS「Weibo(ウェイボー)」にアカウントを持ち、多くのフォロワーがいる。そうしたところに生まれる新たな仕事やファン層の広がりが、退所の決断を後押ししている面もあるだろう。

「ベテラン」ジャニーズ退所が示すもの

また近年の退所のケースからは、ジャニーズの世代的な事情も透けて見えてくる。

現在のジャニーズでは、ジャニーズJr.の勢いが盛んだ。Jr.内には多くのユニットが存在し、互いにしのぎを削っている。ドラマやバラエティに出演するJr.も少なくない。Jr.内ユニットのひとつ、なにわ男子などは、すでにテレビで冠番組を持つほどだ。

その一方で、30代以上のベテランジャニーズの退所が近頃は目立つ。先ほど挙げた渋谷すばる、錦戸亮、山下智久なども皆、30代半ばでの退所である。1970年代に郷ひろみが退所し、事務所を移籍したのが20歳になる年であったのとは明らかな違いだ。

その背景としては、アイドルが終わらないものになったということがある。かつてはアイドルといえば10代の思春期における疑似恋愛の対象という側面が強かった。アイドルは期間限定で夢中になるものであり、一方のアイドル自身にとっても年齢は重要だった。郷ひろみの退所にしても、年齢的にみてアイドルから大人の歌手へと脱皮したいという思いがあっただろう。

しかし、いまやアイドルであることに年齢は関係ないものになっている。1990年代にCDデビューしたジャニーズグループも、その多くが健在だ。30代や40代でもアイドルと呼ばれることは違和感のないものになっている。そうしたことが、いまだかつてないタレントの層の厚さとなり、現在の男性アイドルにおける「ジャニーズ一強」の状況を生んだと言えるはずだ。

ただ先ほどもふれたように、ネットからの発信が可能になり、さらにそれとも連動して海外での活動が現実的になってきたことによって、芸能ビジネスのありかたも大きく変わろうとしている。そしてその流れのなかで、経験の蓄積や新たな理想をもとに、独立したアーティスト的アイドルとしての道を模索し始める30代以上のジャニーズが増えてきた。

今年3月いっぱいで退所することが発表されている長瀬智也も、そのひとりだろう。

現在42歳の長瀬も、1994年のTOKIOでのCDデビュー以来25年を超える活動の実績がある。知られるように、俳優としても数多くの人気作や話題作に主演してきた。退所後どのような活動を展開していくか詳細はまだ明らかになっていないが、「長年にわたって培ってきた表現者としてのクリエイティビティーを活かし、他事務所に属することなく、裏方としてゼロから新しい仕事の形を創り上げていく」という事務所発表の一文からは、やはり独立したアーティスト的生きかたへの志向がうかがえる。

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