欧州は主要国の政権が弱体化、政策停滞の懸念 ポスト・メルケルは弱く、マクロンも支持率低下

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なんとか解散総選挙は回避したイタリアのコンテ首相(写真:ロイター)

イタリアでは2018年の総選挙後に誕生した五つ星運動と同盟のポピュリスト2党による連立政権が崩壊した後、五つ星運動がかつての政権与党・民主党と手を組み、連立政権を運営している。政治経験のない法学者出身のコンテ首相は、前政権で首相に担ぎ出された際は、お飾り的な存在と受け止められていた。だが、首相就任後は国内外で信頼を獲得することに成功し、2019年秋の連立組み換え後も首相に再任された。

イタリアは第1波で感染の震源地となったが、コンテ首相はコロナ禍でもリーダーシップを発揮し、国民から高い支持を得ている。コンテ首相に中道票を奪われた形のレンツィ元首相は、連立政権内での影響力拡大とコンテ首相の退陣をもくろみ、1月13日に自身が率いる小政党の連立離脱を決断した。議会の過半数の支持を失ったコンテ首相は1月18・19日に進退をかけた内閣信任投票に臨み、レンツィ氏率いる小政党の投票棄権もあり、賛成多数で信任された。

コンテ首相の政局に振り回される日々は続く

議会の解散権を持つマッタレッラ大統領の任期は来年2月で、任期終了までの半年間は議会の解散権が制限される。今回の政変を乗り切ったことで、右派ポピュリストの政権奪取につながる議会の解散・総選挙が年内に行われる可能性は遠のいた。

ただ、内閣信任投票で政権支持に回った非与党議員が、今後の政権運営に継続的に協力するとは限らない。秋の予算編成や選挙法改正など、今後も政治的にセンシティブな政策決定のたびに議会審議が紛糾しそうだ。政権の議会基盤は極めて脆弱で、政党間の主導権争いは続きそうだ。

田中 理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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